術中にかぶる帽子のタイプはSSI発生率に影響するのか?

公開日:

2018年3月27日  

最終更新日:

2018年4月25日

Mandatory Change From Surgical Skull Caps to Bouffant Caps Among Operating Room Personnel Does Not Reduce Surgical Site Infections in Class I Surgical Cases: A Single-Center Experience With More Than 15 000 Patients.

Author:

Shallwani H  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Jacobs School of Medicine and Biiomedical Sciences, University of Buffalo, State University of New York

⇒ PubMedで読む[PMID:29447369]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2018 Apr
巻数:82(4)
開始ページ:548

【背景】

アメリカの国立機関であるAORN:The Association of periOperative Registered Nursesは,手術部位感染(SSI)の予防として,surgical skull caps(筒型の耳が出ているタイプの帽子)の使用を中止して,頭髪,耳,もみあげ,うなじ,までを覆うbouffant caps(シャワーキャップタイプ)を使用することを勧告した.
その有効性を検証するため,単独施設の脳外科手術についてキャップの変更前後13ヶ月でのSSI発症率変化を後方視的に調査・解析した.変更前7,513件,変更後8,446件.

【結論】

変更前はskull capを使用していたが,変更後は毛髪部分が全部隠れるようにbouffant cap,口髭のある人はフードタイプ(耳,もみあげ,顎,喉までが隠れるタイプ)の帽子の使用を義務づけた.キャップ変更前後でSSIの発生率は全体で0.07%増加した.手術タイプ別のSSI発生率について,脊椎手術で0.03%増加,開頭術で0.2%減少した.上記変化は,いずれも有意差は認められなかった.

【評価】

比較的単純な2群のアウトカムを簡潔にまとめた論文である.
discussionによると,CDCは1999年に有毛部をすべてカバーするキャップかフードの使用勧告を出したが,特定のタイプ使用にまでの言及はなかった.また,布製のキャップとフード,ディスポーザブルのキャップとフード,などの過去の比較検討でもSSI発生率に有意差は得られていないという.さらには,bouffant capを使用していた従事者からのA型連鎖球菌感染流行例も報告されているように,有毛部をカバーする手段として何が良いかについてのエビデンスはないと考えられる.
著者らは,「国ぐるみのヘルスケア改善努力は称賛に値するが(laudable),エビデンスに準拠すべきであり,義務化するような勧告の場合にはその有効性を検証する必要がある.」とやや皮肉を交えて本論文を結んでいる.
ちなみに,今回の研究を行う発端となったAORNからの論文(AORN Journal 99: 138-145, 2014)を参照してみたが,毛髪や頭皮には常在菌が存在し,毛髪,頭皮が落下して菌を一緒に運ぶというリサーチ結果がある.だから有毛部を全部覆うタイプのbouffant capが良い,という三段論法的な理論展開となっている.つまり,本研究のように,skull capとbouffant capを直接比較した結果に基づく勧告ではないことがわかる.
余談であるが,本サマリー執筆者が所属するアイオワ大学の手術室では,主にbouffant capsがディスポーザブルとして提供されているが,人によっては,アメリカらしく大学のロゴが入った布製のskull caps(skull cap, surgical),顎ひげのある人はキャップにくわえて大きなマスク状の カバー(beard cover, surgical)をしている場合があり,個人の習慣と好みに任されているようだ.

執筆者: 

山口智

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