クモ膜下出血の新しい予後推定モデル:SAHITスコア

公開日:

2018年4月24日  

最終更新日:

2018年4月25日

Development and validation of outcome prediction models for aneurysmal subarachnoid haemorrhage: the SAHIT multinational cohort study.

Author:

Jaja BN  et al.

Affiliation:

Division of Neurosurgery, St Michael’s Hospital, Toronto, ON, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:29348138]

ジャーナル名:BMJ.
発行年月:2018 Jan
巻数:360
開始ページ:j5745

【背景】

クモ膜下出血(SAH)の臨床転帰を予測する研究は広く行われるが,未だ確立した指標はなかった.Toronto大学のJaja BNらは多国籍10,000例を超えるクモ膜下出血症例を基に,精度の高い死亡・機能予後推定モデルを作成し,3,000例以上のコホートでその精度を検証した.モデル作成のためのリポジトリー(developmentalコホート,n=10,936)は既存の7個のRCTデータベースと,2つの施設内前向き登録からなった.検証コホート(n=3,355)は3つのRCTデータベースと4つの施設内登録からなった.予測リスクは発症3ヵ月目の致死率(mortality)と不良な転帰(GOS:1-3)(mRS:4-6)とした.

【結論】

コアモデルでは“年齢”,“高血圧の有無”,“WFNSグレード”が機能予後指標で,検証コホートを用いたROC解析においてAUCは0.80(95% CI:0.78〜0.82)であった.このコアモデルを神経画像モデル(“Fisherグレード”,“動脈瘤のサイズ”,“動脈瘤の場所”)に拡大するとAUCは0.80(95% CI:0.78〜0.82)と改善した.動脈瘤に対する“治療方法”(クリップ,コイル,治療)まで拡大した場合(フルモデル)ではAUCは0.81(95% CI:0.79〜0.83)であった.死亡率に関してのAUCは各0.76,0.69,0.82であった.

【評価】

クモ膜下出血の予後推定モデルはこれまでも幾つか作成されてきたが,いずれもあまり使用されることがなかった.その理由としては,スタディ・デザインが不適切であったり,臨床使用が難しかったり,一般化の困難さなどの問題が指摘されている(文献1).
このSAHITは多国籍の大きな患者集団を元に作成され,かつ検証コホートで高い一致性が示された精度の高い予後推定モデルを提案している.また,SAHITスコアはネット上で容易にアクセスでき(http://sahitscore.com),コア3項目・画像3項目・治療内容を入力すると,“95%信頼区間で死亡率7%〜13%,転帰不良は22〜30%”のように予測値が瞬時に表示される.したがって,患者管理の予想に役立てることができるし,家族への説明と選択にも有用である.また,さらには未破裂例における破裂後の予後予測に用いることも可能であろう.一定の予後が推定できる集団におけるリサーチのためのコホートを作る際にも利用できそうである.
問題点としては,基本となるデータベースの多くが薬効検討などのRCTのものであることから,比較的軽症患者が多いこと,また,developmentalコホートには,30年も前の症例が含まれており,最近のくも膜下出血に関わる医療技術の発展,血管内治療への流れなどが反映されていないのではないかという疑問がある.本研究には,日本からは倉敷中央病院の453例が検証コホートとして登録されている.因みに,Sahitscore画面上のPCAとは後大脳動脈ではなく,posterior circulationのことである.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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