小児悪性神経膠腫にはベバシズマブは効かない:HERBY試験

公開日:

2018年4月25日  

最終更新日:

2018年4月25日

Phase II, Open-Label, Randomized, Multicenter Trial (HERBY) of Bevacizumab in Pediatric Patients With Newly Diagnosed High-Grade Glioma.

Author:

Grill J  et al.

Affiliation:

Pediatric and Adolescent Oncology, Institut Gustave-Roussy, Cedex, France

⇒ PubMedで読む[PMID:29412784]

ジャーナル名:J Clin Oncol.
発行年月:2018 Apr
巻数:36(10)
開始ページ:951

【背景】

成人の初発・再発悪性神経膠腫に対するベバシズマブ(BEV)投与は無増悪生存期間(PFS)を延長することが証明されており,世界90カ国以上で再発膠芽腫への保険償還が認められている(文献1,2).本邦では,初発・再発を問わず,小児も含めた悪性神経膠腫への保険適応が認められている.しかし,小児の悪性神経膠腫は,成人のそれとは遺伝子学的にも生物学的にも異なることが解ってきている.一方で,小児の悪性神経膠腫に対するBEV投与の効果は証明されていない.ヨーロッパを中心としたHERBY多施設研究グループはこの点を明らかにするため,前向きRCT(標準治療である放射線とトモゾロミド:RT+TMZ [n=59] vs. BEV+RT+TMZ [n=62]).一次エンドポイントは無事象生存(event free survival [EFS]:進行あるいは再発)とした.

【結論】

2群間で無事象生存期間(EFS)に差はなかった(RT+TMZ,11.8ヵ月:95% CI,7.9〜16.4ヵ月;BEV+RT+TMZ,8.2ヵ月;95% CI,7.8〜12.7ヵ月;HR 1.44;P=0.13).OSでもBEV追加は死亡リスクを低減しなかった(HR,1.23;95% CI,0.72〜2.09).重篤な有害事象はBEV追加群でより多かった(58% vs. 48%).治験プロトコールに従った治療を完遂できなかったのはBEV追加群でより多かった(22% vs. 5%).
成人のそれとは異なり,小児の悪性神経膠腫では,標準的治療(RT+TMZ)にBEVを追加することによる無事象生存の延長効果は認められなかった.

【評価】

明快な結論である.小児悪性神経膠腫ではBEVはEFSもOSも延長しない.統計学的に差はないが,むしろ標準治療群の方が,EFSがわずかに長い.小児の悪性神経膠腫では血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の遺伝子増幅が高頻度に認められ,逆にEGFRの過剰発現は成人に比較して少なく,MGMTプロモーターのメチレーションは少ない.一方,ヒストンH3.3の遺伝子変異(文献3)が高頻度に認められることなど,成人例とは生物学的背景が大きく異なることが知られている.また,本研究の対象例の腫瘍は造影されないものが多く(79%),成人例とは対照的である.これは腫瘍新生血管の少なさを反映し,それがBEVに対する効果を限定的にしている可能性が推測される.成人悪性神経膠腫と異なるこうした小児に特有の因子が組み合わさって,BEVに対する反応の違いを産み出しているものと思われる.また,一番多い事象(event)の中身は両群とも局所再発であったが,BEV群では局所再発に加えて,遠隔病変の出現が多かった.なお,多変量解析の結果,EFSに寄与する独立因子は無かったが,OSに関しては腫瘍の局在(midline,HR=3.58,p=0.0193)とヒストンH3.3の遺伝子変異G34M(HR=3.21,p=0.191)であった.H3.3の遺伝子変異K27Mは影響を与えなかった.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

米澤大

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