テネクテプラーゼに軍配:急性期脳梗塞に対するEXTEND-IA TNK試験の結果

公開日:

2018年5月1日  

最終更新日:

2018年5月14日

Tenecteplase versus Alteplase before Thrombectomy for Ischemic Stroke.

Author:

Campbell B.C.V.   et al.

Affiliation:

Departments of Medicine and Neurology, Melbourne Brain Centre, Melbourne, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:29694815]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2018 Apr
巻数:78(17)
開始ページ:1573

【背景】

1995年のアルテプラーゼの本邦への導入,そしてここ2〜3年で確定した血栓回収療法の有効性に続いて,急性期脳梗塞に対する新たなパラダイムシフトが訪れようとしている.アルテプラーゼ投与による急性期の主幹動脈の再開率は10%前後と低いが,アルテプラーゼを遺伝子工学的に変異させたテネクテプラーゼはフィブリン特異性が高く,半減期も長く,海外では既に心筋梗塞に対する第一選択薬として使用されている.
2012年に発表された,脳梗塞に対するアルテプラーゼ(0.9mg/kg:25例) vs. テネクテプラーゼ(0.1 mg/kg:25例,0.25 mg/kg:25例)のII相RCT(TAAIS)では,テネクテプラーゼ群の方が再灌流率,臨床転帰が有意に優れていた(文献1).本研究は,発症後4.5時間以内の主幹動脈閉塞患者で,その後,血栓回収が予定されている202例を対象としたII相RCT(EXTEND-IA TNK)である.

【結論】

投与量はテネクテプラーゼ:0.25 g/kgでアルテプラーゼ:0.9 mg/kg.主要転帰(Primary Outcome)は虚血域の50%以上の低下か初回血管撮影上の栓子の消失とした.
主要転帰はテネクテプラーゼ群で22%,アルテプラーゼ群で10%に認められた(発生比2.2で95%CIは1.1〜4.4,非劣性P=0.002,優性P=00.003).発症90日目の機能予後はテネクテプラーゼ群がアルテプラーゼ群より良かった(修正ランキンスコア:2 vs. 3,共通オッズ比:1.7;95% CI,1.0〜2.8,P=0.04).症候性頭蓋内出血は両群とも1%に生じた.

【評価】

テネクテプラーゼはアルテプラーゼに比較して,フィブリン特異性が高く,半減期も6倍長い(20~24分).オーストラリアとニュージーランドの多施設研究グループによるこのEXTEND-IA TNKは,2012年のTAAIS試験(文献1)よりも大規模なコホートでテネクテプラーゼの有効性と安全性を証明したという意味で画期的な治験である.
2018年5月現在,急性期脳梗塞に対するテネクテプラーゼについては,血栓回収を予定しないコホートを含む4つの3相試験が進行中である(文献2).0.4 mg/kgという高用量投与の安全性が既に報告されており,この高用量テネクテプラーゼ投与とアルテプラーゼの比較試験も進行中である.これらの結果がでそろうと,アルテプラーゼからテネクテプラーゼの移行は確実に進むと思われる.
また,テネクテプラーゼのメリットとしてはボーラス投与(10秒以内)での投与が可能なため,一時間かけてのアルテプラーゼの点滴という実用上の煩わしさが軽減,二次救急施設から血栓回収治療施設への搬送,あるいは施設内移動がよりスムーズに行われる可能性が大きい.
しかし,テネクテプラーゼにおいても閉塞血管の開通率が22%と少ないことを考慮すれば,血栓溶解療法が血栓回収(thrombectomy)の前段階治療であることには変わりがない.本論文では,2群間での血栓回収治療による閉塞血管再開率や血栓回収に伴う有害事象に関する記載がないが,今後サブ解析で明らかにされることを期待したい.
2018年5月現在,このテネクテプラーゼの日本への導入を考えている製薬メーカーはなく,また,世界的な多施設共同研究への本邦施設の参加がないという状況を考慮すれば,アルテプラーゼ導入に関わる「失われた十年」が繰り返される事への不安は広がっている(文献3).

執筆者: 

田中俊一   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する