名誉著者(honorary author)が入っている脳外科論文は63%:ICMJEガイドラインとの解離

公開日:

2018年5月1日  

最終更新日:

2018年5月14日

Letter: Honorary Authorship in Neurosurgical Literature: A Cross-sectional Analysis.

Author:

Gadjradj P S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery Erasmus MC: University Medical Center Rotterdam, The Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:29053850]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2018 Jan
巻数:82(1)
開始ページ:E25

【背景】

医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は医学論文における著者の要件を,研究立案,データの取得,データの分析と解釈,論文化,最終校の承認,正確性と真正性の保証までを4項目にまとめ,その全てを満たす者としている.一方で,データの取得のみ,研究の実施のみ,監督のみ,資金獲得のみなど,研究全体と論文執筆に関与していない者は非著者貢献者と定義している.
実際はこのような非著者を,贈与として,共著者に入れておくことは,しばしば認められ,これらは名誉著者(honorary author)と呼ばれている.エラスムス大学のGadjradjらは,脳外科の主要雑誌における名誉著者の問題を解析した.
対象は2015年にNeurosurgery,Journal of Neurosurgery,World Neurosurgery, Acta Neurochirurgicaに掲載された1,612本の論文.373論文について名誉著者問題に関するアンケート調査の結果が得られた.

【結論】

回答者のうち74.1%はICMJEのガイドラインを知っており.65.6%は名誉著者に関わる一般的な事柄を知っていた.大学の部局(department)のシニアメンバーを自動的に著者に入れているのは20.1%であった.また,回答者の33.6%は絶対に,26.4%は滅多に名誉著者は正当化されないとした.回答者の24.2%が,彼らの論文の著者の中に,論文著者として充分な貢献をしていない者(自己認識的な名誉著者)がいると判断していた.しかし,個々の貢献内容をチェックするとICMJEが定義する非著者とすべき貢献内容に合致する著者(ICMJE定義の名誉著者)を含むのは62.9%に達した.

【評価】

大変に重要だが難しいテーマである.
医学雑誌編集者国際委員会 (ICMJE)は医学雑誌著者の条件を下記の全てを満たす者と定義している(株式会社 翻訳センター より引用)(文献2).

1. 研究の構想またはデザイン,あるいは研究データの取得,解析,または解釈に実質的に貢献した.
2. 論文を起草したか,または重要な知的内容について批評的な推敲を行った.
3. 出版原稿の最終承認を行った.
4. 研究のあらゆる部分について,その正確性または公正性に関する疑義が適切に調査され,解決されることを保証し,研究のすべての側面に対して説明責任を負うことに同意した.

Gadjradjらの今回の横断研究では,脳外科の主要な雑誌に掲載された論文のうち過半数の論文にこれを満たさない著者(名誉著者)がいたことがわかった.
近年,医学論文の著者としての資格が厳しく定義されるようになってきた.一方で,最近は多施設共同研究などで,数十名を超える著者数は当たり前になってきており,1000名を超える著者数もある.これらの著者全員がICMJEの著者の定義に合致するはずはない.
一方で,研究参加者としては,苦労して症例を集めたのだから,著者に入れてよ,という当然の思いはある.また,教授が獲得した研究費で研究したのに,教授の名前を入れないのは失礼だよねという思いも理解可能である.さらに,一流雑誌に名を連ねることが,外的資金を獲得したり,職を得たりするのに絶対必要条件となっている現在,責任著者は周りを見回して,誰か入れてあげられる同僚はいないかと忖度することになる(見返りの期待も含めて).すなわち,名誉著者増加の圧力は益々強くなっているというのが現状である.
論文の著者であることが学術活動の評価の主要軸となっている現在のシステムが続く限り,名誉著者の問題はなくならない.論文数を補完する簡便に算出できる客観的な学術活動評価指数が何かないか,考えなければならない時代である(文献3).

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー


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