テモゾロミド耐性悪性グリオーマに対するオロチン酸カルボキシアミドトリアゾール (CTO)の投与:67%で臨床的ベネフィット

公開日:

2018年7月30日  

最終更新日:

2018年7月30日

Multicenter Phase IB Trial of Carboxyamidotriazole Orotate and Temozolomide for Recurrent and Newly Diagnosed Glioblastoma and Other Anaplastic Gliomas.

Author:

Omura A & Pentsova E  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:29683790]

ジャーナル名:J Clin Oncol.
発行年月:2018 Jun
巻数:36(17)
開始ページ:1702

【背景】

カルボキシアミドトリアゾール(Carboxyamidotriazole,CAI)は,電位非依存的カルシウムチャンネル(Ca2+)ブロッカーで,多彩な細胞シグナルに影響を与え,動物モデルでは癌細胞増殖抑制,浸潤抑制,転移制御などの効果が認められている.また加齢黄斑変性などの血管新生性病変への利用も期待されている.CAIのオロチン酸塩(Carboxyamidotriazole Orotate:CTO)は,新規の経口投与可能な化合物で,CAIよりも抗腫瘍活性が高く,毒性が少ないことが示されている.また,テモゾロミド(TMZ)との相乗効果も報告されている(文献1).スローンケタリング癌センターを中心とする研究チームはTMZ抵抗性再発悪性グリオーマ27例(コホート1)と初発膠芽腫15例(コホート2)に対する経口CTOと経口TMZの併用療法のIb相試験を行った.

【結論】

最大 812.5 mg/m2 までのCTO投与量では,用量制限毒性は認められず,TMZの濃度にも影響しなかった.CTOの腫瘍組織内濃度は血中濃度を上廻っており,高い腫瘍集積性が認められた.コホート1ではMGMT非メチル化腫瘍,IDH-1ワイルドタイプ,ベバシズマブ抵抗性腫瘍を含む67%に臨床的ベネフィットが得られ,CR+PRが7例であった.コホート2では2年PFSが35%,2年OSが62%,OS中央値は未達(追跡期間中央値:28ヵ月)であった.

【評価】

CAIは成長因子/PI3-K/Akt/PTEN/m-TOR/RAF/MAP-K/MEK/Wnt-β-catenin/HDACなど非常に多様なシグナル伝達経路を調節して,腫瘍細胞の成長と血管新生を抑制することがわかっている.また,局所腫瘍免疫逃避から回復させることも示唆されている.さらに高い腫瘍集積性と血液脳関門の通過が示されている.しかし,CAIによる1相試験は,神経学的なあるいは全身性の副作用とバイオアベイラビリティの低さによって阻害された.また Mikkelsenらの,初発GBM 55例に対する放射線照射(60 Gy,30 Frac.)+CAI連日服用(照射中+照射後)の第二相試験では,CAIは安全に使用可能であり,充分な血中濃度に達したが,historical controlと比してOSの延長効果は得られなかった(2007年).この理由として,当時 Mikkelsenらは,CAIがBBBを通過しにくい可能性,投与量の不十分さ,抗けいれん剤の影響などを示唆しており,CAIによる膠芽腫の治療はもはや試みられるべきではないと結んでいる(文献2).
CAIのオロチン酸塩であるCTOでは上記のCAIの特性を残しながら,低毒性と高いバイオアベイラビリティを示し,脳腫瘍を含まない固形癌に対する1相試験で,高い安全性が示唆されている(文献3).本試験では,再発TMZ耐性悪性神経膠腫に対するCTO投与によって,半数の症例で腫瘍体積の縮小が認められている(本文Fig.1).また,新規膠芽腫患者においても2年OSが50%を超えるなど,かなりpromisingな治療結果と思われる.CAIと比較したCTOの安全性,高い組織中濃度,TMZとのコンビネーションが先行するMikkelsenらのII相の結果との差を産んだものと考えられている.特筆すべきは,CTOに対する反応性はEGFR遺伝子の重複やホットスポットでの変異を有するもので高かった点であり(p = 0.005), 膠芽腫の3割を占めるEGR遺伝子変異陽性腫瘍をターゲットとしたCTO投与も視野に入るかもしれない.CTOは既に,卵巣がんや肺癌でも2相試験が開始されているようである.素朴な疑問として,少なくとも腫瘍増殖を抑制する濃度のCa2+チャンネルブロッカーを投与した時に,正常細胞機能に影響を与えないかという点が気になるところである.細胞レベルではアムロジピンなども抗腫瘍効果を示すとの報告もあるが,臨床的には効果は報告されてはいない.一方で,電位依存性Ca2+チャネルと異なり,電位非依存性Ca2+チャネルの実態はTransient receptor potential (TRP)タンパク(TRPチャネル)と考えられており,膠芽腫にはTRPスーパーファリー中のいくつかの遺伝子が高発現しているようである(文献4).そこを選択的に抑制するのであれば,CAIが通常のシグナル伝達に対してあまり影響を与えないまま,膠芽腫細胞に対する増殖抑制を示すことは理解できる.最近,TMZ耐性再発膠芽腫に対しては,抗EGFR阻害剤,腫瘍溶解ウィルス(アデノ,ポリオなど)(サマリー参照1)による高い治療効果も報告されており,ポストTMZ戦場には群雄が並んでいるが,特殊な治療環境を必要としないCTOは,今後予定されている2相試験の結果次第では一歩リードする可能性がある.本論文についてはLancet oncologyでDas Mがコメントしており(文献5),そちらも参考にされたい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

花谷亮典

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