一次予防アスピリンのリスク評価の前提:一般人口における重大出血の頻度はどれくらいなのか?

公開日:

2018年7月30日  

最終更新日:

2018年7月30日

Annual Risk of Major Bleeding Among Persons Without Cardiovascular Disease Not Receiving Antiplatelet Therapy.

Author:

Selak V  et al.

Affiliation:

Section of Epidemiology and Biostatistics, University of Auckland, Auckland, New Zealand.

⇒ PubMedで読む[PMID:29946729]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2018 Jun
巻数:319(24)
開始ページ:2507

【背景】

米国予防医学専門委員会(USPSTF)は,今後10年間の心血管疾患(CVD)発症リスクが10%以上の50〜59歳の成人に対し,心血管疾患と大腸癌の一次予防として,低用量アスピリンの使用を勧告している(文献1).しかし,低用量アスピリン服用のリスク-ベネフィット・バランス評価の前提となるアスピリンを服用していない健常人の重大出血のリスクに関する適切な研究報告はなく,勧告では過去の報告から推定した値を用いている(文献2).本研究はニュージーランドにおいてプライマリーケアを受け,CVDリスク評価を受け,抗血小板剤を服用していない30〜79歳の359,166名を対象とした前向きコホート研究で,追跡期間中央値2.78年における重症出血イベントの頻度を求めた.

【結論】

1,281,896人・年の経過観察期間で 3,976件の重大出血があった.73%は消化管出血であった.致死的出血は 274(7%)件でそのうち153件が脳内出血であった.非致死性出血の頻度は2.96/1000人・年で,男女とも高齢者において高くなった(30〜39歳男性:1.8,70〜79歳男性:6.4,30〜39歳女性:1.5,70〜79歳女性:5.0).

【評価】

今回の研究の結果,健常者における重大な出血リスクは,USPSTF勧告の前提となった推計値よりもかなり高いことが明らかになった.特に40〜49歳の患者における非致死性消化管出血のリスクでは最も大きな差が生じた(例えば男性では,本研究の対象者では1.83/1000人・年に対して,USPSTF勧告における推定値は0.5/1000人・年).著者等は,本研究のデータを用いれば,CVD一次予防におけるアスピリンの有用性の評価は,USPSTF勧告よりもっと低いものになるではないかと予測している.心血管疾患一次予防におけるアスピリンの使用については,未だに議論が続いているテーマであり,本邦のランダム化比較試験(JPPP試験)ではその有用性が否定されたところである(文献3).本研究の結果は,一次予防におけるアスピリンについては,今後も人種,年齢,リスク因子,年齢毎での堅固なデータに基づいて議論されなければならないことを示唆している.

執筆者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する