救急隊員による脳卒中の病型予測が可能:JUSTスコア

公開日:

2018年8月6日  

最終更新日:

2018年8月6日

Clinical Prediction Rules to Classify Types of Stroke at Prehospital Stage: Japan Urgent Stroke Triage (JUST) Score.

Author:

Uchida K  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Hyogo College of Medicine, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:30002147]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2018 Jul
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

急性期脳卒中のうち主幹動脈閉塞症(Large vessel occlusion:LVO)に対しては血管内治療(EVT)が広く行われているが,治療適応は発症8時間以内に限られるため,救急隊員による早急かつ適切な搬送先選定は重要である.兵庫医科大学のUchidaらは,脳卒中疑いで搬送された1,229症例を開発コホートとし,臨床情報からLVOを含めた脳卒中の病型を予測するスコア(JUSTスコア;21項目)を制作し,検証コホート1,007症例で妥当性を検証した.

【結論】

多変量解析では, 全脳卒中,LVO,脳内出血(ICH),クモ膜下出血(SAH)のAUC値は各0.88,0.92,0.84,0.89であった.検証コホートでは同値各0.80,0.85,0.77,0.94で,LVO予測能は既存スケール(CPSS:AUC値 0.77)に対して優れた.

【評価】

本邦発の着院前脳卒中病形予測スケールに関する報告である.JUSTはJapan Urgent Stroke Triageの略.予測に用いた臨床指標は年齢,喫煙歴,頭痛の有無,血圧など21項目でいずれも特別な方法を用いなくてもスコア化可能なものである,詳細は原著を参照されたい.
有用性評価の比較対象には,Cincinnati Prehospital Stroke Scale(CPSS),Rapid Arterial Occlusion Evalution(RACE)scale,Field Assessment Stroke Triage for Emergency Destination(FAST-ED)scaleの3つの既存スケールが用いられた.CPSSはtPA適応の拾い上げを目的に開発され,虚血性脳卒中を感度 0.59,特異度 0.88で予測し,3項目から成る簡便さから広く用いられるが,近年のEVT普及によりLVO同定を可能とするスケールの開発が求められるようになった.着院前脳卒中重症度スケール(PASS)はLVO同定を目的として開発され同じく3項目からなる(文献1)が,これに対してもJUSTスコアが優れる結果となった(AUC 0.73,感度 0.61,特異度 0.83 vs. AUC 0.85,感度 0.69,特異度 0.91).
本手法はLVO以外にも,ICHやSAHといった出血性脳卒中の予測能を有し,これらの搬送精度向上にも貢献することが期待される.脳卒中患者搬送時の病形予測を焦点とした本研究は,救急隊員によるトリアージに有益なだけでなく,大規模脳卒中センターを有さない医療圏の初療機関からのドリップ・シップ・レトリーブの流れの迅速化にも寄与する可能性があり,それによる医療経済的メリットも期待出来る.
本邦では,これまで,脳卒中の着院前評価としてはtPAの適応と重症度評価のためのKPSS(倉敷脳卒中前病院スケール),血栓回収適応の評価のためのFACE2ADなどが使用されてきた.スコア化項目は前者が4個で,後者が6個である.Justスコアの評価項目は21個にのぼり,救急現場ではやや多い印象を受けるが,筆者らの検証では救急隊員がタブレット端末アプリを用いた場合に中央値37秒(24〜58秒)で入力可能であり,実用性に問題はないと述べている.
しかし,3人しか乗務しない救急車の中で,患者の安全確保から搬送先の選択まで,膨大な作業をこなさなければならない救急救命士にとってFACE2ADですら煩雑との感想を聞いたことがある.Justスコアではどうか,音声入力の可能性も含めて,実用性の検証を期待したい.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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