遺伝子改変ポリオウイルス(PVSRIPO)による再発膠芽腫の治療:5年生存が21%

公開日:

2018年8月6日  

最終更新日:

2018年8月6日

Recurrent Glioblastoma Treated with Recombinant Poliovirus.

Author:

Desjardins A  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Duke University Medical Center, Durham, NC, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:29943666]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2018 Jul
巻数:379(2)
開始ページ:150

【背景】

Duke大学から,腫瘍溶解性ウイルスであるポリオ-ライノウイルス・キメラ(PVSRIPO)による再発膠芽腫のIb相治験の報告である.対象は再発膠芽腫連続61例.コントロール(歴史的対照)は同施設で過去に治療した104例.PVSRIPOは腫瘍内に設置したカテーテルを通して,6.5時間をかけて定位的に投与された(convection enhanced delivery).2相試験用量設定のため,7種類の用量を投与した.

【結論】

用量制限毒性は1例に認められた(grade 4の頭蓋内出血).PVSRIPOによる脳脊髄炎,髄膜炎はどの用量でも認められず,5.0×107×TCID50が第2相試験用量として設定された.OS中央値はPVSRIPO投与群12.5月で,コントロール群11.3月で,差はなかった.しかし,VSRIPO投与群の生存率は2年,3年,4年,5年で21%と,コントロール群の14%,4%,2%,0%を上回っていた.

【評価】

ポリオはウイルス+鎖一本鎖RNAウイルスで,その翻訳は組織特異的配列内リボソーム進入部位(IRES)に依存性で,神経由来細胞内で活性化する.ポリオ–ライノウイルス・キメラ(PVSRIPO)はポリオウイルス1型ワクチン株(Sabin1型)の神経毒性を抑制するためにIRESをヒトライノウイルスのそれに置き換えた遺伝子組み換えウイルスである(1996年,文献1).PVSRIPOはグリオーマ細胞内で選択的に増殖して腫瘍細胞を溶解することが報告されている(2000年,文献2).グリオーマ細胞の選択的感受性はグリオーマ細胞に発現しているポリオウイルス・レセプターのCD-155の存在によると推測されている.また,抗腫瘍効果は,腫瘍細胞の直接的な破壊のみならず,インターフェロンなどのサイトカインの放出による局所腫瘍免疫の活性化も関与するとみられている.本1b相試験では,大きな有害事象は少なく,一方でOSは歴史的対照と差は無かったものの,投与後3年の生存率が21%で,その後5年目まで低下しておらず,一部の症例ではあるが著効することが示されている.ただし,PVSRIPO投与部位周囲の浮腫のために一部の患者ではデキサメタゾンに加えて,ベマシズマブの投与が余儀なくされている.
現在Duke大学では再発膠芽腫に対するPVSRIPO単独 vs. PVSRIPO+Lomustineの2相試験が進行中であり(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02986178),また小児の再発悪性神経膠腫に対する1b相治験も進行中である(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03043391).
ちなみに,1996年当時ニューヨーク州立大学にいたGromeier M(現デューク大)がPVSRIPOを初めて報告して以降,この1b相の報告までに実に22年を要している.2相の結果が出るまで,今後5〜6年かかるとすれば,実用まで30年を要することになる.長い長い開発の物語をいつかまとめて聞きたいと思う.
なお,再発膠芽腫に対する腫瘍溶解性ウイルスによる1b相臨床試験の報告は,MDアンダーソン癌センターのアデノウイルス(DNX-2401)(参照サマリー1)(J Clin Oncol. 2018. May)に次いで本年の2本目であるが,奇しくも3年生存率は共に約20%である.

執筆者: 

鮫島芳宗   

監修者: 

有田和徳

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