髄膜腫の術前塞栓療法は静脈血栓症と肺塞栓のリスク

公開日:

2018年10月12日  

最終更新日:

2018年10月12日

Post-operative cardiovascular complications and time to recurrence in meningioma patients treated with versus without pre-operative embolization: a retrospective cohort study of 741 patients.

Author:

Wirsching HG  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, University Hospital and University of Zurich, Zurich, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:30196368]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2018 Sep
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

髄膜腫に対する術前塞栓術は,術中出血量の軽減や術野の明瞭化という利点からしばしば行われるが,切除術後の合併症について詳細な検討はなされていない.筆者らは2000年から13年間にチューリッヒ大学で切除術を受けた髄膜腫症例(n=741)を対象に,術前塞栓術とその後の転帰を検証した.術前塞栓術施行は337名(42%).

【結論】

認められた心血管イベントは深部静脈血栓症が39例,肺塞栓症が64例であった.多変量解析では,術前塞栓術(OR 2.38),女性(OR 2.18)が心血管イベントの危険因子であった.
無再発生存期間(RFS)は,WHO grade Ⅱ-Ⅲ髄膜腫と中間-高悪性度メチル化サブタイプ髄膜腫の両者において,塞栓術を受けた患者群で有意に短かった(中央値 4.3vs. 7.0年,p=0.029と同 2.0vs. 8.2年,p=0.005).

【評価】

髄膜腫に対する塞栓術は術後心血管イベントの危険因子である,という報告である.髄膜腫の術前塞栓術に関する前向き試験は乏しく,多くは小規模の非比較試験であった(文献1).特に塞栓術と心血管イベント発症率や髄膜腫再発率に関しては報告がなかった.髄膜腫患者の心血管イベントについては2つ報告されているが(文献2,3),本稿は従来の報告とは対照的に手術時間,年齢,死亡率との有意な相関は認めなかった.既報と同様に,神経障害は心血管リスクと相関したが,“女性”との関連について指摘したのは本稿が初めてである.本コホートでは塞栓術による医原性合併症が既報より少なかったが(文献4),これは神経放射線科医の技術的な差が影響していると筆者らは考えている.また,本研究の腫瘍塞栓比率が既報より高い点は,高集積センターとしての特色が反映されている可能性がある.
RFS短縮の原因は不明だが,塞栓術により壊死した組織の周囲では有糸分裂が活性化し,腫瘍発育に寄与したという推測も可能である.また当然ながら,より大きな腫瘍サイズ(47 mm vs. 31 mm,p<0.0001)や腫瘍周囲浮腫の強いものが塞栓術の適応として選ばれやすいという選択バイアスは考慮されなければならない.
今回,心血管イベントの直接的な危険因子や機序について結論は得られていない.壊死組織から放出されるサイトカインが血栓傾向を招いている可能性も想定されるが,ステロイド使用や術後の安静度との関係については未検証である.高リスク患者群の選別やリスク因子確定のためには,今後RCTが必要である.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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