新型デバイスWEBが有効な脳動脈瘤とは

公開日:

2019年1月4日  

最終更新日:

2019年1月11日

Factors that determine aneurysm occlusion after embolization with the Woven EndoBridge (WEB).

Author:

Kabbasch C  et al.

Affiliation:

Department of Neuroradiology, University Hospital of Cologne, Cologne, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:30355777]

ジャーナル名:J Neurointerv Surg.
発行年月:2018 Oct
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

Woven EndoBridge(WEB)は自己拡張型の脳動脈瘤閉塞デバイス(intra-aneurysmal flow disruptor)で,中大脳動脈分岐部や脳底動脈先端部などの動脈瘤のうちワイドネックでコイルによる塞栓が困難な症例に使用されてきているが,特に有効性が期待される動脈瘤の性状や再発のリスク因子に関する報告は少ない.ドイツCologne大学のKabbaschらは,2011~2018年にWEBで治療した脳動脈瘤患者113名(114個)を対象にRaymond-Roy閉塞分類を用いて治療成績・再発リスク因子等を評価した.

【結論】

6ヵ月後の血管撮影フォローアップができた98名のうち,動脈瘤の完全閉塞は62.2%,頚部残存は21.4%,動脈瘤残存(aneurysm remnant)は16.3%であり,動脈瘤再発は15.3%にみられた.動脈瘤残存の関連因子は,瘤内部分血栓化(p=0.004),再発動脈瘤(p=0.023),動脈瘤の大きさ(p=0.019),コイル併用(p=0.002).動脈瘤再発の関連因子は瘤内部分血栓化(p<0.001),動脈瘤の大きさ(p=0.005),コイル併用(p=0.001)であった.一方,WEBのみによる治療群(n=71)では,動脈瘤残存の関連因子はWEB留置後の不完全閉塞(p=0.003),男性(p=0.003)で,動脈瘤再発は瘤の高さと関連していた(p=0.008).

【評価】

WEBは主にwide neckの嚢状動脈瘤に対して使用されており,動脈瘤内に留置されると,瘤内への血流が減弱し,造影剤がうっ滞した後,動脈瘤先端部から血栓化が進むことで治療効果が得られている.また,本デバイスの特徴として瘤内留置のみで親動脈側に突出しないことから,ステントやフローダイバーターに比べ抗血小板薬の使用は少ない事が期待出来る(文献1).治療成績に関しては2011年のKlischらによる初めての報告以降,欧州のWEBCAST,WEBCAST-2,French Observatory Study,欧米でのWEB-IT,CLARYS studyに代表される前向き研究において数多く良好な報告がなされており(文献2),安全性も期待されている.本研究は114個の脳動脈瘤に対する新型デバイスWEBの治療成績に与える因子を解析した後ろ向き研究である.実際は,88個(77.2%)でWEB単独治療が,26個(22.8%)でコイルや他のデバイス(ステントやフローダイバーター)が併用されている.その結果,大型脳動脈瘤,血栓化動脈瘤,コイルの併用例におけるWEB治療例では動脈瘤残存や再発リスクが高いことが示された.すでにLimbucciは,ワイドネックは動脈瘤残存のリスク因子であると報告しているが(文献3),本研究では有意なリスク因子に至っていない.大型動脈瘤に対して筆者らはWEBとコイルの併用を検討しているが,やはりコイル併用例の50%で動脈瘤再発が生じている.これらの大部分でcoil compactionが生じており,これによるWEBのドーム側への移動が動脈瘤再発の原因と考えられる.筆者らはデバイスの大きさを超える大型動脈瘤に対するWEBの使用やコイルの併用は慎重に検討すべきとしている.WEBのみの治療群では再発率が13%と低かったが,最大径11 mm以下の脳動脈瘤に対する結果であり,大型動脈瘤への適応は未だ課題である.
WEBが導入された当初,デバイスの球形の形状と形状記憶性によって,WEBではコイル塞栓術で見られるようなcompactionは起こりにくいと考えられていたが,実際は“WEB compression”といわれるWEBの高さが縮小する現象が30%程の症例でみられ,動脈瘤残存の原因となっている(参文献4).このことが,本研究において,WEBのみによる治療群で,動脈瘤の高さ(8.9±2.0 vs 6.6±2.3 mm,p=0.008)が再発率のリスク因子となった原因であると思われる.
WEB compressionへの考慮から,デバイス展開時における早期の瘤内血栓化を促進する目的で,やや大きめのWEBデバイスを推奨している他の報告もあるが,未だエビデンスに乏しい(文献5).
本研究は,長期的な観察が不十分であるものの,100例を超える症例においてWEBの有効性やリスク因子を解析しており,今後,WEBの適応症例を検討する上で有益な情報をもたらしている.
ちなみにWEBは米国(CA)のシークエント社が開発・販売してきたが,2016年6月に日本のテルモ株式会社によって買収されている.
一方,メドトロニクス社が開発しているARTISSEは半球状のメッシュで動脈瘤のネック側のみをカバーするもので,いわばintra-aneurysmal flow disruptorとflow diverterの両方の性質を有している.今後臨床試験が行われる予定である(NCT02998229).
日本では,2019年1月1日現在はWEBもRTISSEも臨床治験の計画はなく,国外臨床治験成績に基づく導入が行われるか否かも不明である.

執筆者: 

鮫島芳宗   

監修者: 

有田和徳

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