えっ,日本のてんかん有病率は人口の0.3%?:世界疾患負担研究(GBD)2016から

公開日:

2019年4月9日  

最終更新日:

2019年4月16日

Global, regional, and national burden of epilepsy, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016.

Author:

GBD 2016 Epilepsy Collaborators  et al.

Affiliation:

Laboratory of Neurological Disorders, IRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario Negri, Milan, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:30773428]

ジャーナル名:Lancet Neurol.
発行年月:2019 Apr
巻数:18(4)
開始ページ:357

【背景】

Global Burden of Disease Study(GBD)は,世界の疾病と傷害による社会的負担に関わる最大規模のデータベースで,Bill and Melinda Gates Foundationがサポートし,WHOを初めとする世界中の2500人の研究者が参加している.GBD2016は1990~2016年における195ヶ国の328の疾病・傷害に関する発症率・有病率・疾病負担に関する巨大なデータベースである.疾病負担は障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY)と損失生存年数(years of life lost:YLL)で表される.本論文は世界・地域・国家・年齢・性・経済状況などの区分毎のてんかんによる疾病負担の報告である.

【結論】

2016年には活動性てんかん患者は全世界で45.9百万人(24.0百万人が特発性てんかん),有病率は621人/10万人であった.年齢調整後死亡率は1.74人/10万人.有病率は5~9歳と80歳以降でピークとなった.DALYは183年/10万人.2016年は1990年と比較して,特発性てんかんの有病率には差は無かったが,これによる死亡率は有意に減少していた.社会・人口統計学インデックス(SDI:個人所得,教育年数,出生率などの組み合わせ)の低い国家と高い国家間でのDALYの差の1/3は低所得国家におけるてんかんの重症度が高いことが原因で,残りの2/3はSDIの低い国家におけるYLLの高さが原因であった.

【評価】

GDBは当初,世界銀行単独の事業として1990年に開始され,その後,WHOの事業として規模を拡大しながら継続され,現在は米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)を拠点として,WHOを含む世界中の研究施設が協力して研究が進められており,Bill and Melinda Gates Foundationの資金で運営されている.
これまで,その成果は1990年,2000年,2010年,2015年版のGBDとして報告されてきた.このGBDのデータを基に各国あるいは国際機関で健康・疾病対策に対する提言・政策立案が行われている.
最も新しいデータが2016年版として,その概要が2017年のThe Lancetに(文献1),続いて各疾患あるいは地域などのカテゴリー別にLance+などで発表されている.神経領域の疾患については2019年に入ってLancet neurology上で,主要な神経疾患,アルツハイマー病,頭部・脊髄外傷,多発性硬化症,脳卒中,悪性脳腫瘍などの解析結果が次々に紹介されている.
ちなみに,本論文によれば,2016年の日本におけるてんかん(特発性+症候性)の有病率は311(253~371)/10万人で,世界で一番低く,特発性てんかんの有病者数は24.7万人,特発性てんかんによる死亡数は681人,DALYは7.6万年であった.1990年と比較すると,死亡者数は10.3%減少,有病者数は4.3%増加,DALYは11.4%減少している.
従来,日本におけるてんかんの有病率は1000人に対し4~9人(人口の0.4~0.9%)とされており,全国で92~158万人の患者数(文献2)と推定されていた.今回のGBD-Epilespyにおける有病率はその半分以下である.GDB2016では,世界中の56.356個の科学論文,健康関連省庁のデータ,世帯調査,保険請求データ,病院データをベイズのメタ回帰ツール,DisMod-MR 2.1で統合している.てんかんについても317個という膨大なデータソース用いており,批判的な評価は容易ではないが,従来信じられて来た有病率との差が何故生まれたのか,検討すべき課題である.

執筆者: 

香川幸太   

監修者: 

飯田幸治

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する