再発膠芽腫に対する免疫チェックポイント阻害剤は手術前投与(ネオアジュバント)の方が効く

公開日:

2019年4月5日  

最終更新日:

2021年2月25日

Neoadjuvant anti-PD-1 immunotherapy promotes a survival benefit with intratumoral and systemic immune responses in recurrent glioblastoma.

Author:

Cloughesy  TF  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, David Geffen School of Medicine, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:30742122]

ジャーナル名:Nat Med.
発行年月:2019 Mar
巻数:25(3)
開始ページ:477

【背景】

膠芽腫に対する免疫チェックポイント阻害剤の投与に関しては多くの治験が進行中であるが,当初の期待通りの効果を示していない(文献1,2,3).UCLAなどのIvy Foundation早期臨床試験コンソーシアムは,摘出可能病変を有する再発膠芽腫に対するPD-1阻害剤ペムブロリズマブ(pembrolizumab)の効果を明らかにするために,アジュバント vs. ネオアジュバントのランダム化比較試験を行った.登録症例=35例(実際の治療患者は両群とも16例).ネオアジュバント群は腫瘍摘出の約2週間前にペムブロリズマブ200 mgが投与され,手術後は両群ともペムブロリズマブ200 mgが3週間毎に投与された.

【結論】

ネオアジュバント群は,アジュバント群に比較して,OSとPFSの延長が認められた(OS:13.7 vs. 7.5ヵ月 [p=0.04],PFS:3.3ヵ月 vs. 2.4ヵ月 [p=0.03]).ネオアジュバント群では,腫瘍内のT細胞関連,γ-インターフェロン関連の遺伝子発現が上昇しており,細胞周期関連遺伝子の発現は抑制されていた.
PDL-1の局在性発現,末梢血中T細胞クローンの増加,T細胞のPD-1発現低下と単核球の減少はネオアジュバント群でより頻繁に認められた.これらの所見は,PD-1阻害剤の術前投与が抗腫瘍免疫反応を亢進させていることを示唆した.

【評価】

本研究では,PD-1ネオアジュバント投与は,わずか1サイクルの投与で,腫瘍局所と全身での抗腫瘍免疫が亢進し,結果として,PFSとOSを改善することを示唆した.
免疫チェックポイント阻害剤の術前投与に関しては,2018年にNEJMで発表された肺非小細胞癌に対するニボルマブの術前投与(2サイクル)の探索研究の結果が有名である(文献4).これによれば,ニボルマブの術前投与群では,病理学的に切除された腫瘍にmajor pathologic response(腫瘍細胞の90%以上が死滅)が9例(45%)で認められた.Major pathologic responseが認められた腫瘍では,そうでない腫瘍に比べて腫瘍遺伝子変異総量が有意に高値であったという.同様に悪性黒色腫においてもニボルマブ+イピリムマブの術前投与の有効性が報告されている(文献4).現在,早期非小細胞肺癌に対する術前ニボルマブ+イピリムマブ vs. ニボルマブ+化学療法 vs. 化学療法単独の第三相試験(CheckMate 816)が日本を含む世界で進行中である.
PD-1阻害剤の術前投与(ネオアジュバント)の効果は,免疫チェックポイントが解除されて活発になったT細胞が,術後投与(アジュバント)に比較してより多様で多量の腫瘍抗原(antigen burden)に出会うチャンスがあることであり,これによって腫瘍抗原特異的な反応性を有するT細胞を大量に教育出来る点にあると考えられている.また,その後に主病巣が除去されても,抗原特異性を記憶したT細胞(CD127陽性)が生き残っているので,残存する浸潤病巣,転移病巣への攻撃を続けることが出来る.大変に魅力的なコンセプトであるが,詳細なメカニズムに関しては引きつづいて検討されているところである.
Nature Medicineの同一号では,本論文の他,膠芽腫に対する免疫チェックポイント阻害剤に関して,エール大学から,膠芽腫患者30例(うち再発が27例)に対するニボルマブの術前投与(2相試験)の結果が出ている.ニボルマブ術前投与によって腫瘍局所におけるケモカイン転写の促進,免疫細胞の浸潤の促進,T細胞受容体のクロナリティーの多様化のような抗腫瘍免疫の活性化が認められることが報告されている(文献5).さらに,コロンビア大学からは,過去にPD-1阻害剤投与を受けた患者の膠芽腫のゲノム変化が報告されている.これによれば,PD-1阻害剤に反応した腫瘍ではMAPKシグナル経路の変異が,PD-1阻害剤非反応腫瘍では免疫抑制シグナルの亢進を伴うPTEN遺伝子変異の増加が見られるという(文献6).
現段階で,免疫チェックポイント阻害剤の膠芽腫に対する臨床的効果のエビデンスは確立していないが,今回のNature Medicine 3報のように,現在,世界中で多方面からのアプローチが続けられている.術前投与に関しても,サイクル数の増加,アルキル化剤との併用,放射線照射との併用,CTLA-4阻害剤との併用など多くの修飾が考えられる.今後のブレークスルーに期待したい.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳