ESUSに対するダビガトランはアスピリンに対する優越性を示さず:RE-SPECT ESUS試験

公開日:

2019年7月2日  

最終更新日:

2019年7月5日

Dabigatran for Prevention of Stroke after Embolic Stroke of Undetermined Source.

Author:

Diener HC  et al.

Affiliation:

Faculty of Medicine, Universit, Duisburg-Essen and University Hospital, Essen, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:31091372]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2019 May
巻数:380(20)
開始ページ:1906

【背景】

脳塞栓症の多くは心原性であり,非弁膜症性心房細動患者の一次・二次脳卒中予防におけるDOAC(NOAC)のワーファリンに対する優越性は既に証明されている(文献1).一方,脳塞栓症のうち20〜30%は原因不明であり,これらはembolic stroke of undetermined source (ESUS)と呼ばれている.
この研究はESUS患者の脳卒中再発抑制におけるダビガトランのアスピリンに対する優越性を検討するための二重盲RCTである.ESUS患者5390例を,ダビガトラン群(150mg×2錠/日)(2695例)か,アスピリン群(100mg/日)(2695例)に割り当てた.主要効果アウトカムは脳卒中再発で,安全性アウトカムは大出血とした.

【結論】

中央値11ヵ月の観察期間で,アウトカムの頻度は全脳卒中でダビガトラン群4.1%/年,アスピリン群4.8%/年(HR,0.85;95%CI,0.69~1.03,P=0.10),脳梗塞でダビガトラン群4.0%/年,アスピリン群4.7%/年(HR,0.84;95% CI,0.68~1.03)であった.大出血はダビガトラン群1.7%/年,アスピリン群1.4%/年(HR,1.19;95% CI,0.85~1.66)であった.すなわち主要アウトカムにおいても安全性アウトカムにおいても2群間に差はなかった.

【評価】

脳塞栓症のうち①近位動脈に50%以上の狭窄がない,②ラクナ梗塞でない,③心臓に心房細動などの塞栓源がないという基準を満たす症例をESUSと定義する.脳塞栓中の20〜25%を占めるに対するESUSに対する二次予防は,ガイドライン上は抗血小板剤の投与となっている(文献2).ESUSの中には,未発見の心内塞栓源や心房細動が含まれていると推測され,このため,DOACの二次予防効果が期待されている.実際,ESUS患者における心房細動の発見頻度は10~15%と報告されている.
しかし,2018年に発表されたNAVIGATE ESUS試験は,DOACの一つであるリバロキサバンはアスピリンに比べて,脳卒中の再発予防効果において優越性はなく,出血リスクはアスピリンより高いことを示した.本RE-SPECT ESUS試験はふたたび,ESUS患者の脳卒中再発抑制におけるDOACのアスピリンに対する優越性を否定するものとなった.出血性リスクでは,大出血で差はなかったものの,大出血ではないが臨床的に有意の出血はダビガトラン群で有意に多かった(HR,1.73;95% CI,1.17~2.54).この試験は世界42か国,564施設で行われた試験であり,ヨーロッパ(58.8%),アジア(22.2%),北米(11.0%),ラテンアメリカ(4.2%)をカバーしているので,文句なしに,世界中で適応できる結果である.
現在,ESUSに対するDOACのtrialでは,ドイツにおけるアピキサバンのATTICUS試験(データcompletionが2019/12/01)の結果が公表されていないが(文献3).この試験は500例が目標とされており,数は少ないが,埋め込み型心電図記録計の装着を前提とし,心房細動が検出された患者にアピキサバンを開始するというプロトコールである.これでもDOACの優越性が示されなければ,ESUSに対するDOAC投与は完全に否定されることになるだろう.

執筆者: 

田中俊一   

監修者: 

有田和徳

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