脳外科レジデントの うつや燃え尽き予防に強度・忍耐エクササイズは有効か?:サウスカロナイナ大学の経験

公開日:

2019年7月29日  

最終更新日:

2019年8月2日

Impact of a Residency-Integrated Wellness Program on Resident Mental Health, Sleepiness, and Quality of Life.

Author:

Spiotta AM  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Medical University of South Carolina, Charleston, South Carolina;USA

⇒ PubMedで読む[PMID:30395329]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2019 Jun
巻数:84(6)
開始ページ:1326

【背景】

米国では,レジデントの死因の2位は自殺で,燃え尽きやうつはレジデントの約半数が経験し,精神的不健康は不十分な患者ケアの要因でもある.このため,米国卒後医学教育認定委員会はレジデント共通プログラムに,レジデント自らが幸福感の維持のための習慣やセルフケアのスキルを学ぶ手段を提供することを求めている.サウスカロナイナ医科大学(MUSC)脳外科では,この主旨に沿って,レジデントのための“La Sierra”という総合ウェルネスプログラムを開始した.このプログラムにより,隔週の運動,食事,節酒,精神衛生のレクチャーと週1時間のチーム単位での強度・忍耐エクササイズがレジデントプログラムに組み込まれた.

【結論】

8人が一年間のプログラムの前後で心理検査を受けたが,不安スコア(GAD-7),QOLスケール,Epworth 眠気スケールいずれもプログラム開始前より一年終了時点で有意に改善していた(p<0.05).参加したレジデントの感想では,このプログラムを通して,心理的な幸福感が改善した,臨床や患者ケアにおける責任感が向上した,チームワークが促進されたと感じるものが多かった.

【評価】

日本と同様,米国でもレジデント達は強いストレス,社会的孤立,ケアの非人格化,管理事務業務の増加,長時間労働,短い入院期間,シフトや睡眠の変化,運動不足によって,メンタルヘルスが大きく障害されている(文献1).米国では一般外科では約20%が,脳外科は15%(文献2)がレジデントプログラムを終了することが出来ていないが,燃え尽きやうつが大きな要因と考えられる.MUSC脳神経外科は,これに対処するため,隔週のレクチャーと毎週1時間のエクササイズからなるLa Sierraプログラムを実践したところ,心理的健康感が改善したというのがこの論文の主旨である.
そもそも,La Sierraプログラムとうい名称は,1960年代に高校の体育教育に強化・耐久エクササイズを取り入れ,当時JFケネディーが絶賛したというたLa Sierra高校 (南カリフォルニア・リバーサイド)に対するhomage(オマージュ)であると記載されている.この高校独特のエクササイズはその謳い文句のstrength and enduranceが示すように海兵隊新兵トレーニングを彷彿とさせるような厳しいものであった.実際のMUSC脳外科のエクササイズセッションはその一部をYouTube (38~53秒)で見ることが出来るが,見るからにハードそうである.これ,一年間,毎週やれば確かにcamaraderie(仲間意識)が醸成されるだろうと思う.
このスタディーは対照のないシンプルな観察結果で,科学性は欠如しているが,そのような論文がNEUROSURGERY誌に掲載されたという事自身が米国における脳外科レジデントの心理的・身体的健康問題の重大さをクローズアップしているのかも知れない.ひるがえって日本ではどうか.このようなプログラムを有していること自身は入局者不足で悩む教室にとっては,いい呼び水になるかも知れない.昔,毎週,海軍体操と野球をやっていた脳外科教室があったらしいが,もしかすると時代を先取りしていたことになる.しかし,日本の現状では,先ずはレジデントみんなが集まる時間を作ることから苦労しそうである.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー


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