急性期脳梗塞に対する早期EVTの有効性は発症4.5時間が境目:6756症例の登録研究

公開日:

2019年7月29日  

最終更新日:

2019年8月2日

Association Between Time to Treatment With Endovascular Reperfusion Therapy and Outcomes in Patients With Acute Ischemic Stroke Treated in Clinical Practice.

Author:

Jahan R  et al.

Affiliation:

Division of Interventional Neuroradiology, David Geffen School of Medicine, University of California, Los Angeles

⇒ PubMedで読む[PMID:31310296]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2019 Jul
巻数:322(3)
開始ページ:252

【背景】

急性期虚血性脳卒中(AIS)に対する血管内血栓除去治療(EVT)はガイドライン変更に伴い実施の機会が増大している.一方,治療開始のタイミングが臨床転帰におよぼす影響に関して詳細は不明である.本稿は,米国GWTG(Get with the guideline)-Strokeレジストリー参加の231病院で登録された前方循環系の主幹動脈閉塞に対するEVT施行例6,756症例を対象に,「発症-穿刺時間」,「来院-穿刺時間」と臨床転帰との関係を検討した後ろ向きコホート研究である(発症-穿刺時間≦480分).期間は2015年1月から2年間.

【結論】

「発症-穿刺時間」および「来院-穿刺時間」の中央値は各230(170~305)分,87(62~116)分.認められた症候性脳出血は6.7%,院内死亡/ホスピス転院は19.6%.退院例では,独歩36.9%,機能独立(mRS 0~2)は23.0%.
「発症-穿刺時間」が30~270分間であれば,15分ごとに独歩退院率が1.14%上昇し,院内死亡/ホスピス転院率は0.77%,症候性脳出血は0.22%低下した.
一方,「来院-穿刺時間」が30~120分間であれば,15分ごとに自宅退院が2.13%上昇し, 院内死亡/ホスピス転院率は1.48%低下した.

【評価】

従来からAIS発症からEVT開始までの時間が短いほど,治療効果が高くなる,逆に言えば,長くなるほど効果が低くなることは報告されてきた.この研究が明らかにした事実の核心は,その関係はlinearではなく,non-linearである点である.
すなわち,発症から4.5時間以内,来院から2時間以内にEVTを開始できる場合,早ければ早いほどその効果と安全性は急速に高まる.逆に,遅くなれば急峻な傾きでその効果は減衰する.この早期治療開始効果はtPAのそれを上回っている.
一方,「発症-穿刺時間」4.5時間と「来院-穿刺時間」2時間というタイムポイント以降はEVT開始までの時間と効果の減衰にはさほど急峻な傾きはみられず,EVTを早める意義も相対に薄れるという結論である.
著者等によれば,その理由の一つに,時間短縮の効果が最も高いfast progression群では,そのタイムポイントまでに大きな梗塞に進展してしまっており,残ったslow progression群では時間短縮効果が少ないことを推測している.したがって,その後は,虚血penumbraの大きさのより的確な見極めの方が重要になるのかも知れない.Time-baseからTissue baseでの患者選択の切り替えである.
これまでの複数のRCTによって急性期脳梗塞に対するEVTの有効性が確立するとともに(文献1),“time is brain”のコンセプトに基づき,AISに対する血栓除去(再灌流療法)を重視した搬送システムや医療圏の整備が本邦においても進んでいる.一方,これまで発症~治療開始時間の厳密な層別化や長期追跡,外的妥当性などを大規模コホートで検討することは困難であった.本研究は米国GWTG参加のセンターの大規模コホートをもとに,治療介入開始時間が臨床転帰に及ぼす影響がnon-linearであることを明瞭にした.本研究結果は既報(オランダ国内における小規模検討)とも概ね一致する(文献2).今後同様の検証結果が蓄積されれば,脳卒中疑い症例に対するプレホスピタルでの対応や診療手順に少なからず影響を与えると考えられえる.特に主幹動脈閉塞が疑われる早期(救急隊)覚知症例はtPAよりもEVT施行が可能な施設への直接搬送がより強化されるだろう.
本研究の課題としては,実際の閉塞動脈の再開通時間ではなく穿刺時間で評価している点や,多重性調整を行っていない点が上げられる.これらの点も考慮しながら,今後,本邦におけるエビデンスが示されることを期待したい.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する