24時間以内の急性期脳梗塞対する翼口蓋神経節の電気刺激:新規治療の登場

公開日:

2019年7月29日  

最終更新日:

2019年8月2日

An injectable implant to stimulate the sphenopalatine ganglion for treatment of acute ischaemic stroke up to 24 h from onset (ImpACT-24B): an international, randomised, double-blind, sham-controlled, pivotal trial.

Author:

Bornstein NM  et al.

Affiliation:

Shaarei Zedek Medical Center, Jerusalem, Israel

⇒ PubMedで読む[PMID:31133406]

ジャーナル名:Lancet.
発行年月:2019 Jul
巻数:394(10194)
開始ページ:219

【背景】

動物の脳虚血モデルにおいて,翼口蓋神経節電気刺激が,側副血流の増加と脳血液関門の安定化を通して脳梗塞サイズを縮小することが知られている.またヒトでのパイロット試験でもそのことが示唆された.ImpACT-24B試験はイスラエル,欧州,北米など73センターで実施された二重盲RCTである.対象は前方循環の閉塞による脳梗塞でtPAや血管内治療の適応でない1000人.481人には,最終健常確認8~24時間後に経軟口蓋的に翼口蓋神経節に向けて刺激電極が注入され,その後5日間,毎日4時間電気刺激が施行された.519人にはシャム操作が実施された.主要解析は修正ITT.

【結論】

修正ITT対象の全患者では,発症3ヵ月目で,受診時NIHSSスコア・性・年齢から予測されるmRSより実際のmRSが良かった患者の割合は,刺激群ではシャム群より多かったが有意差はなかった(49% vs. 45%,オッヅ比1.14,p=0.31).受診時画像検査で大脳皮質病変(CCI)が出ていた患者520例では,mRSが予測より良かった患者の割合は,刺激群ではシャム群より有意に多かった(50% vs. 40%,オッヅ比1.48,p=0.0258).また,mRS≦3も刺激群で有意に多かった(p=0·01).

【評価】

上唾液核に由来する副交感神経線維は中間神経内(第7脳神経)を通り→錐体上面で顔面神経膝を出て前方に走り→大錐体神経となり→深錐体神経と合して翼突管神経となって→蝶口蓋神経節(翼口蓋神経節)にいたり→ここでシナプスを変えて鼻粘膜,軟口蓋,扁桃腺,口蓋,涙腺などに節後線維を送っている.節後線維の一部は師板や三叉神経などを通って,頭蓋内動脈に至り脳動脈壁に分布し,血管拡張作用を通して脳血流の恒常性などに関与している(文献1).既に動物実験において,翼口蓋神経節の刺激が側副血行の増加や脳血液関門の維持などを通して,脳梗塞巣の縮小をもたらすことがわかっている(文献1).
この研究グループは本治療法確立のために径2 mm,長さ23 mmの注入型刺激電極と注入装置を開発した.治療は,主治医とは異なる医師が,局所麻酔下に軟口蓋を穿刺し,この電極をイメージガイド下に患側の翼口蓋窩に向けて注入し,電極注入後は同側の顔面上においたトランスミッターから刺激パルスを送るというものである.刺激は4時間/日,5日間行い,5日後に電極を抜去する.シャム群では,局所麻酔と軟口蓋穿刺手技までは行うが,電極は挿入しない,顔面上からの刺激パルスは送る,5日後の抜去はそのふりだけをする.この結果,患者,主治医,評価者のいずれも当該患者が電極設置群であるか,シャム群であるか分からないという三者盲試験となっている.良く洗練された治験プロトコールである.本試験は,先行するパイロット試験(ImpACT-24A,253例)で安全性の確認とともに機能予後の改善が示されたことを(文献3)受けて,より大規模な患者集団を対象に実施されたpivotal trial (本試験)である.その結果,初診時大脳皮質病変がある群において,翼口蓋神経節の刺激が発症3ヵ月目の機能予後を有意に改善し,この治療の有効性が示された.その効果の程度は,発症後3時間以内のtPA投与に匹敵し,3~4.5時間のtPA投与を超えている.
全対象患者1000人のうち,約半数を占める初診時(baseline)に大脳皮質領域梗塞が認められた患者でのみ有意差が出たのは,翼口蓋神経節刺激が主として軟膜血管を通した側副血行(leptomeningeal collateral vessels)に影響を与えていることを反映しているのかも知れない.
この治療はtPAの適応からはずれる発症8時間後であっても,24時間以内であれば実施可能であり,血管内手術のチーム・設備がない第一線病院,高齢でアクセスルートがない,梗塞巣が大きいなどの血栓除去治療非適応症例では血栓除去術に代わる有用な代替治療となる可能性がある.また血管内血栓術除去が不首尾に終わった症例に対する救済治療になるかもしれない.

執筆者: 

菅田淳   

監修者: 

有田和徳

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