強化降圧治療は脳基底核出血の増大リスクを抑えるが,視床出血の増大リスクを抑えない

公開日:

2019年8月2日  

最終更新日:

2019年8月2日

Association of Intensive Blood Pressure Reduction With Risk of Hematoma Expansion in Patients With Deep Intracerebral Hemorrhage.

Author:

Leasure AC  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Yale School of Medicine, New Haven, CT, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31081862]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2019 May
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

エール大学のLeasureらは,強化降圧治療が,深部脳内出血の血腫増大を防ぎ,機能予後を改善させるかについて,日韓中を含む国際共同RCT(Antihypertensive Treatment of Acute ICH-2:ATACH-2)のデータベースに基づいて探索解析を行った.非適切症例を除く深部脳内出血780例が検討対象となった.標準治療群の375例では発症から2時間以内に収縮期圧を140~179mmHgに低下させ,強化降圧群の405例では110~139mmHgに低下させた.444例が基底核出血で,336例が視床出血.

【結論】

深部脳出血全体では,標準治療群に比較して強化降圧群は初診後24時間以内の血腫増大(>33%)のリスクは有意に減少した(OR,0.61[95%CI,0.42~0.88];P=0.009,多変量解析).層別化解析では,強化降圧は,基底核出血に対しては血腫増大のリスクを有意に減少させたが(OR.0.44[95%CI,0.27~0.72];P=0.001),視床出血はそうではなかった(OR.0.91[95%CI.0.51~0.64];P=0.76).
一方,いずれの群でも,強化降圧治療は機能良好(mRS≦3)に相関しなかった.

【評価】

ATACH-2試験は,脳内出血に対する強化降圧治療の効果を標準治療と比較して検討した国際RCTである.脳葉型出血も含んだ全1000症例では,主要評価項目であった3ヵ月後の死亡+重度機能障害(mRS>3)も,初診後24時間以内の血腫の33%以上の増加も二群間で差は無かった(2016年,文献1).
本研究は,全症例を対象とした本試験の結果発表後に行なった探索研究である.脳葉型出血など他部位の出血,データ欠失例を除いて,高血圧が発症に深く関わっている(文献2)深部脳内出血(基底核出血+視床出血)の780例のみを検討対象とした.その結果,強化降圧治療は深部脳出血の24時間以内の増大を抑制するが,血腫の部位別に検討すると,その効果は基底核出血では認められたが,視床出血では認められなかった.
深部脳出血の原因は長年月の高血圧に起因する穿通小動脈病変の破綻であり,血腫の増大も血腫周囲の小動脈が脳内出血に伴う反応性高血圧によって破綻して起こると理解されているが,強化降圧の血腫増大抑制効果は基底核出血と視床出血では全く異なった.この差が何によるのか,血管支配の差か,生物学的な背景の違いか,周囲構造との関係(例:視床では脳室に隣接しているため,脳室穿破による自然な減圧が起こりやすい)の違いなのか.その解明は今後の検討課題である.
本探索研究の結果を受けて,基底核出血のみを対象とした強化降圧治療に関するRCTの実施が期待される.また,最近脳内出血増大のリスク因子として注目されているスポットサイン(文献3)との関係も興味深い.さらに,強化降圧治療の機能予後改善効果について明らかにするためには,より大規模なコホートが必要と思われる.

執筆者: 

有田和徳

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