頭蓋内測定の代用マーカーの感度と特異度

公開日:

2019年8月2日  

最終更新日:

2019年8月2日

Diagnosis of elevated intracranial pressure in critically ill adults: systematic review and meta-analysis.

Author:

Fernandob SM  et al.

Affiliation:

Division of Critical Care, Department of Medicine, University of Ottawa, Ottawa, ON, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:31340932]

ジャーナル名:BMJ.
発行年月:2019 Jul
巻数:366
開始ページ:l4225

【背景】

頭蓋内圧(ICP)亢進症に対してはICPモニターを用いた20 mmHg以下での管理が強く推奨されるが,脳外科医不在や医療資源に乏しい施設では現実的でない.
本稿は「身体所見」「頭部CT」「眼球エコー検査での視神経鞘径(optic nerve sheath diameter, ONSD」「経頭蓋ドプラ- pulsatility index(TCD-PI)」のICP亢進の識別能を検証したシステマティック・レビューである.
対象は40研究報告(5,123症例,≧16歳).ICP亢進の診断は侵襲的ICPモニター≧20 mmHgもしくは術中所見に基づく.

【結論】

原疾患は外傷性脳損傷(64.5%),クモ膜下出血(14.3%),複合性(18.8%)など.身体所見とその感度・特異度は,「瞳孔不同:(28.2%,85.9%)」,「異常肢位:(54.3%,63.6%)」,「GCS≦8:(75.8%,39.9%)」.CT所見の感度・特異度は,「脳底槽圧迫:(85.9%,61.0%)」,「正中偏位(80.9%,42.7%)」,「10 mm以上の正中偏位:(20.7%,89.2%)」.視神経鞘径のROCカーブのAUCは0.94(0.91~0.96)と高いが,TCD-PIによるAUCは0.55~0.72に過ぎなかった.

【評価】

重傷頭部外傷の管理では頭蓋内圧の連続モニターは必須であるが,脳外科医がいない施設や種々の理由で頭蓋内圧センサーを挿入できない患者では,代用マーカーで頭蓋内圧,特にそのクリティカルポイント(20 mmHg)を推定することが重要となる.
従来より眼底検査によるうっ血乳頭の検出はICP亢進所見として知られるが,急性ICP亢進が直ちにうっ血乳頭を来すわけではない.一方,視神経鞘径は頭蓋内圧を鋭敏に反映することが知られており(文献1,2),本研究でもその有用性が示唆された.ただし,ONSDの閾値は各研究で異なったため(4.8 mm~6.3 mm)(文献3),感度・特異度は算出できていない.
頭蓋内圧が上昇すると,中大脳動脈血流速度のうち拡張期成分速度が低下し,pulsatility index(PI=[収縮期血流速度-拡張期血流速度]/平均血流速度)が上昇することは,1980年代から知られており,救急現場で普及してきた(文献4).本対象研究の一部にはTCDの有用性(TCD-ABP法)を示す報告もあるが(AUC 0.85:0.78~0.91)(文献5),全体としてはTCD-PIの感度・特異度は低かった.確かに,側頭骨骨窓の個人差,血圧の違い,外頸動脈信号の混入などの影響を受けるため,TCD-PIのみで頭蓋内圧亢進の閾値を決定するのは困難かも知れない.ただし個々の患者での変化の観察は有用性が高いと思われる.
また,身体所見のみでは頭蓋内圧亢進は除外困難であり,CTの正中偏位の有無もそれほど感度の高い所見ではなかった.
したがって,現段階では,ONSDが最も信頼性が高い代用マーカーと言えそうであるが,検者の熟練の問題,閾値設定の問題,病態による閾値の違いの可能性など解決すべき問題も多い.
本研究は各所見の感度・特異度を個別に評価しているが,実臨床のように複数所見を組み合わせた結果は算出していない.さらに,測定されたICP値が平均値なのか1点での観察値であるのか,初回治療からどのくらいの時間を空けた値であるか明らかでない点や,研究ごとにICP亢進の有病率が異なる点は気になるところである.今後より緻密な検証がなされ,複数の所見項目から非侵襲的にICPを推測できるツールが完成されれば,時間・資源に制限のある神経救急の現場で有用となるであろう.
それまでの間は,厳密な頭蓋内圧コントロールが必要な患者は,直接的ICPモニタリングが可能な施設に搬送するというのが,正しい選択である.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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