若年期脳卒中患者の死亡比は30日生存者でも健常者の5.6倍で癌死の割合が3分の1:オランダにおける住民ベース研究

公開日:

2019年8月2日  

Association of Stroke Among Adults Aged 18 to 49 Years With Long-term Mortality.

Author:

Ekker MS  et al.

Affiliation:

Radboud University Medical Centre, Donders Institute for Brain, Cognition, and Behaviour, Department of Neurology, Nijmegen, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:31121602]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2019 May
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

脳卒中罹患患者のうち10~15%を18~49歳の若年者がしめる(文献1,2).若年期で脳卒中に罹患した患者の長期死亡率はどうなっているのか.オランダRadboud大学のEkkerらは,同国の3つのレジストリー(退院データ,死因,人口動態)のデータをリンクして,標準化死亡比SMRを求めた.
対象は,1998~2010年に,若年期(18~49歳,中央値44歳)に脳卒中に罹患した15,527名(53.3%が女性).追跡は2017年1月まで行い,追跡期間中央値は9.3年.

【結論】

死亡数は全体で3,540件,発症後30日以内が1,776件,その後の追跡期間中が1,764件.30日生存者のその後15年間の死亡率は17%であった.虚血性脳卒中後30日生存者のSMRは5.1(95%CI,4.7~5.4)で,出血性脳卒中後30日生存者では8.4(95%CI,7.4~9.3)であった.その死因は悪性腫瘍32.7%,心血管疾患17.1%,再発脳卒中あるいは脳卒中関係15.1%であった.

【評価】

オランダの全国民を対象とした本研究では,若年期脳卒中罹患患者では30日間生存者であっても,SMRは5.6と高く,特に出血性脳卒中患者では8.4に達することを明らかにした.
経年的な変化については,虚血性脳卒中では,30日生存者の5年間死亡率は,1998年の罹患で8.0%,2010年の罹患で3.0%と大幅に改善しているが,出血性脳卒中患者では9.6%と12.1%で全く改善していない.虚血性脳卒中では,最近,MRIの普及等によって早期診断が可能になり,比較的軽症の患者が登録されるようになったためかも知れない.
単純に考えれば,脳卒中患者だから,心血管疾患か脳血管疾患による死亡がSMRを押し上げているのだろうと思われるが,意外にも死因を見ると悪性腫瘍32.7%,心血管疾患17.1%で,両者の割合はオランダの同一世代の死亡原因に占める割合より高いという.これは何を意味するのか,患者達がこれらの疾患と脳卒中に共通するリスク因子を有しており,その後もそれらのリスク因子に曝されているということなのか.解明が待たれる.
本文中では,性,10歳毎の年齢集団,在院日数,併存疾患(Charlson comorbidity index)の重症度ごとの解析も詳述されており,脳卒中罹患患者の治療とケアに関わっている医療者にとって必読の論文と思われる.
なお,このような全国規模の調査が可能であったのは,オランダでは85%の国民が,出生日・性・郵便番号の組み合わせがユニークであり,この組み合わせで,個人を特定出来ることによるとされている(文献).
一方,30日目の身体機能と,死亡率との関係はどうなのか.mRS<2でも,SMRはやはり高いのか,サブ解析の結果を待ちたい.
本研究対象には入っていない機械的血栓除去術導入後の患者群では,長期的な死亡率がどう変化するのかも興味深い.

執筆者: 

菅田淳   

監修者: 

有田和徳

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