AIに10秒間洞調律の心電図を読ませたら,発作性の心房細動を当てる

公開日:

2019年9月30日  

最終更新日:

2019年10月9日

An artificial intelligence-enabled ECG algorithm for the identification of patients with atrial fibrillation during sinus rhythm: a retrospective analysis of outcome prediction.

Author:

Attia ZI  et al.

Affiliation:

Department of Cardiovascular Medicine, Mayo Clinic, Jacksonville, FL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31378392]

ジャーナル名:Lancet.
発行年月:2019 Sep
巻数:394(10201)
開始ページ:861

【背景】

心房細動(AF)の多くは無症状であり気付かれていないことが多いが,脳梗塞や心不全の重要な原因の1つである.しかし,AFの約半数を発作性AFが占めるので,AFの検出には時間とコストがかかることが多い.メイヨークリニックのAttiaらは機械学習をさせたAIに洞調律の12誘導デジタル心電図を読ませ,心房細動を検出させた.心電図データセットはトレーニングセット:454,789個(126,526名),内部検証セット:64,340個(18,116名),テストセット:130,802個(36,280名).

【結論】

テストセットのうち3,051(8.4%)名がテスト用の洞調律心電図の以前にAFが認められた患者であった.1回の洞調律心電図だけでのAI評価では,AUC 0.87(95% CI 0.86~0.88),感度79.0%(77.5~80.4),特異度79.5%(79.0~79.9)でAFを識別した.F139.2%(38.1~40.3),全精度は79.4%(79.0~79.9)であった.AFが起こった時から1ヵ月前までに記録された全ての洞調律心電図を評価対象に含めると,AUCは0.90,感度は82.3%,特異度は83.4%に上昇した.

【評価】

本研究は,脳塞栓の2次予防にとって重大な変化をもたらす可能性がある.脳塞栓症が疑われながら受診後早期には心房細動を含めて塞栓源が見つからない塞栓源不明脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source;ESUS)の原因の1つが発作性AFと考えられている.すなわち洞調律の患者に発作性にAFが起き,この時に脳塞栓を起こし,着院時にはAFに戻っているという仮説である.しかしこの仮説に基づいて,ESUSの二次予防に関して実施された,従来のアスピリンに対するDOACの優越を検証するための2件(ダビガトラン,リバロキサバン)のRCTは,いずれも否定的な結果に終わっている(文献1,2).その理由として,かなりの割合でアテローム血栓性脳梗塞患者が含まれていた可能性が指摘されている.現在,ESUSに対するDOACの試験では,ドイツにおけるアピキサバンのATTICUS試験(データcompletionが2019/12/01)が進行中である(文献3).この試験は500例が目標とされており,症例数は少ないが,埋め込み型心電図記録計の装着を前提とし,心房細動が検出された患者にアピキサバンを開始するというプロトコールである.
今後AIによる判定に基づいて,高い可能性で発作性AFを有する患者の抽出が可能なれば,ESUS患者に対する入院後早い段階からのDOAC投与という選択肢はあり得る.また,感度は低くても特異度の高いカットオフを用いれば,不要な侵襲的なモニタリングが減少する可能性がある.何しろ相手がAIなので,何を指標にAFを予測したのかはわからない.AFの背景に存在する心筋肥大,線維化,心腔の拡大などが生み出す微妙な電気生理学的変化をピックアップしているものと類推するしかないが,今後の発展が期待される研究である.
当然のことながら,「おいおいAI,おまえ何見てAFを当ててるの?」の回答がえられれば,AFをめぐる基礎・臨床研究は一気に展開することになる.

執筆者: 

東 拓一郎   

監修者: 

有田和徳

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