血管内血栓除去術に全身麻酔は有用か?

公開日:

2019年10月7日  

最終更新日:

2019年10月9日

Association of General Anesthesia vs Procedural Sedation With Functional Outcome Among Patients With Acute Ischemic Stroke Undergoing Thrombectomy: A Systematic Review and Meta-analysis.

Author:

Schönenberger S  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, University of Heidelberg, Heidelberg, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:31573636]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2019 Oct
巻数:322(13)
開始ページ:1283

【背景】

血栓回収術には全身麻酔が良いのか,処置時鎮静で良いのか,既報の3個のRCT(文献1,2,3)からの368例を基に検討した.183例(49.7%)は全身麻酔,185(50.3%)は処置時鎮静を受けた.入院時のNIHSS(0~42)は2群間で差は無かった(18 vs. 17).

【結論】

3ヶ月目の平均mRSは全身麻酔群2.8(95% CI,2.5~3.1),処置時鎮静群3.2(95% CI,3.0~3.5)と,全身麻酔群で良好であった(difference,0.43;cOR,1.58;p=0.02).事前特定有害事象のうち低血圧(ベースラインからの20%以上の収縮期圧の低下)と血圧の変動(収縮期圧>180あるいは<120 mmHg)は全身麻酔群で多く,いずれも有意の差であった(80.8% vs 53.1%;OR,4.26;p<0.001と79.7% vs 62.3%;OR,2.42;p<0.001).

【評価】

まず,全身麻酔症例が約半数という事実に驚いた.血栓回収術は日本ではほとんどの施設で,鎮静と局所麻酔下で実施されている.これには麻酔科医の数の違いが影響しているのかも知れない.日本麻酔学会の最近の資料では,人口10万人あたりの麻酔科医数は日本では5人前後,米国では13人とある.また,日本のように,何でも外科医自らが鎮静と局所麻酔で対処して手術が完了するという風土とは異なるようで,全麻件数は米国では年間4,000万件と日本の17倍になっている.麻酔科医一人当たりの年間実施の全麻件数も日本の3倍である.米国では慢性硬膜下血腫,脳室ドレナージも殆どが麻酔医による挿管全麻下で行っているのは既に本サマリーでも取り上げた(文献4,参考サマリー1).
本研究では,全麻群の方が循環動態の安定には苦労しているようだが,再開通率(TICIスコア2b~3)は全麻群の方が高く(72.7% vs. 63.2%),3ヵ月目のmRSも全麻群の方がわずかに良く(mRS,2.8 vs. 3.2),mRS:0~2の機能予後良好患者の割合も全麻群の方が高い(49.2% vs. 35.1%).入院時の重症度(NIHSS)は両群間に差がないので,やはり,全身麻酔によって不動が得られている効果であろうか.麻酔薬による脳保護も関与しているのかも知れない.
確かに,沈静下では脳底動脈閉塞症例やステントレトリーバー回収時では,痛みによる体動や呼吸性移動で視認性やスムーズな操作が妨げられるので,全身麻酔であればなーという思いを実施者が抱くことはあるようである.
ただ,本研究対象では,病院着から再開通まで(Door to reperfusion time)が,全身麻酔,鎮静群とも中央値150~165分となっている.このくらいだと全身麻酔と局所麻酔で再開通までの時間の差は出ないのかもしれない.しかし現在,本邦における高次脳卒中センターではDoor to reperfusionは70~100分となっている.このくらいの即時性を維持しようとすれば,麻酔科が介入する時間的余裕はなくなってくる可能性がある.血栓除去術の効果予測には血流評価(ischemic penumbraの大きさ)も重視されるが,やはり時間の要素は重要である.今後,包括脳卒中センターに専任の麻酔医が配置されれば,この時間枠を維持しながら全身麻酔下の血栓除去治療が可能になるのかも知れない.

執筆者: 

菅田淳   

監修者: 

西牟田洋介

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