腰痛症に対する幹細胞注射療法:レビューと重大合併症

公開日:

2019年10月7日  

最終更新日:

2019年10月9日

Stem cell injections for axial back pain: a systematic review of associated risks and complications with a case illustration of diffuse hyperplastic gliosis resulting in cauda equina syndrome.

Author:

Aoun SG  et al.

Affiliation:

Departments of Neurological Surgery , University of Texas Southwestern Medical Center

⇒ PubMedで読む[PMID:31491761]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2019 Sep
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

幹細胞治療は再生治療の手段として注目されている.腰椎椎間板変性に起因する腰痛症も幹細胞注射療法の対象としていくつかのトライアルが行われてきた.米国ではFDAがこの治療を厳重に制限してきたが,米国以外では治療,使用する細胞の種類(自己由来,同種由来)への制限が厳重でない国,地域もある.この論文では同治療のシステマティック・レビューを行うとともに幹細胞治療で発生した重大合併症の事例を紹介している.

【結論】

PRISMAガイドラインに沿って12の研究論文を対象とした.結果,147名の腰痛症患者に対して椎間板に幹細胞を注射した治療が行われていた.追跡期間は6ヶ月から6年.RCTは1研究のみであった.使用した細胞は自家幹細胞が9研究(腸骨骨髄6,脂肪組織2)で,同種幹細胞が3研究(胎児由来の神経幹細胞,胎児由来骨髄幹細胞1,椎間板由来幹細胞1)であった.治療結果は,改善なしが1報,ある程度の効果ありが11報で,治療効果があった場合にも6ヶ月から2年で効果は減退し,手術治療に移行する傾向があった.合併症としては注射部位,幹細胞採取部位に関連するものや,腰椎多発性神経根炎によって歩行失調を来した1例が報告されていた.

【評価】

この論文では,上記システマティック・レビューの結果を述べた後に,米国外(メキシコ,ロシア)で2度の腰椎椎間板幹細胞注射療法を受けた患者に発生した重大合併症を症例報告している.この症例では馬尾の著明な腫大を来たし,手術で治療を試みたが,神経根が硬いゼラチン状の膜で覆われており,椎弓切除による除圧は奏功せず対麻痺を後遺したという.乱暴な言い方になるが,「注射したあとの成り行きは幹細胞に聞いてくれ」のような再生療法が行われていることへの警鐘的な論文であり,治療効果自体も一般的に行われているステロイド硬膜外注射と変わりないないのではと批判的な論調で考察している.

執筆者: 

山口智

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