抗潰瘍剤テプレノン(セルベックス)がアルツハイマー病患者のMMSE改善をもたらす

公開日:

2019年10月31日  

最終更新日:

2019年11月6日

A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study to Evaluate the Efficacy of Teprenone in Patients with Alzheimer's Disease.

Author:

Yokoyama S  et al.

Affiliation:

Division of Neurosurgery, Nanpuh Hospital, Kagoshima, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:31498121]

ジャーナル名:J Alzheimers Dis.
発行年月:2019 
巻数:71(4)
開始ページ:1187

【背景】

抗潰瘍剤として30年以上一般に使用されてきたテプレノンの作用の一つに,胃粘膜細胞における熱ショック蛋白(HSP)誘導による変性蛋白の修正を通した細胞保護作用が知られている(文献1).また,最近テプレノンがHSP70の誘導を通して脳内アミロイドβ蛋白の変性・凝集を抑制する可能性も示唆されている(文献2).Nanpuh hospitalのYokoyamaらはこの効果を活かしたテプレノンのアルツハイマー病(AD)患者への治療効果を明らかにするために二重盲RCTを実施した.患者はMMSE:13~26/30の軽度から中等度ADで,42例がテプレノン群に37例が偽薬群に割り付けられた.評価は12ヵ月後に行った.

【結論】

AD評価スケール日本語版ADAS-Jにおける変化は,二群間で差はなかった (偽薬,0.6 ± 0.8;テプレノン,0.4 ± 0.8;p=0.861).しかし,MMSEはテプレノン群で有意に改善した(偽薬,–1.2 ± 0.5;teprenone,0.2 ± 0.5;p=0.044).サブグループ解析では,VSRAD-Zスコアによる評価で側頭葉内側構造の萎縮が軽度である者では,この改善は有意(p=0.013)で,重度であるものでは有意ではなかった(p=0.61).

【評価】

著者等は,この結果を受けて,側頭葉内側構造の萎縮が進行しない段階でのテプレノン投与がADの進行を抑制する可能性があると述べている.
マウスADモデルでは,テプレノンの投与によって,HSP70の発現促進を介して,アミロイドβ蛋白の凝集,老人斑の形成,神経細胞死が抑制されることが知られている.TGF-β 1 は貪食性ミクログリアの活性化を通してアミロイドβ蛋白の除去の関わっていると考えられているが,HSP70はアミロイドβ蛋白分解酵素の活性化とTGF- β1の発現促進を通して,アミロイドβ蛋白の除去に貢献しているものと考えられる(文献3).また,本研究の結果から,おそらく側頭葉内側の萎縮が強い進行したADでは,これらの機構が働かないのではないかと,著者等は推測している.
さらに,ADAS-JとMMSEによる評価間で大きな差が出たことについては,遂行課題の違いによるところが大きいのではないかと考えている.例えば,MMSEにある注意(attention)や計算課題はADAS-Jにはない.
テプレノンは長く使用されている安全性の確立した抗潰瘍剤であり,今回の研究で,使用されたテプレノンの量(300 mg [6 caps.]/日)でも,偽薬群とに有害事象の発生率に差はなかった.
本研究では,ドネペジル(3m→5mg)は全例で使用されているし,メマンチンも両群4~5例ずつ同率で使用されている.日本においてこれらの薬物を使用しない臨床治験はあり得ないと思うが,これら抗AD剤の使用が一般的ではない国や地域での治験に期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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