血栓回収術中の血圧管理が機能的予後に与える影響について

公開日:

2019年10月21日  

最終更新日:

2019年11月6日

Association of Blood Pressure During Thrombectomy for Acute Ischemic Stroke With Functional Outcome: A Systematic Review.

Author:

Maïer B  et al.

Affiliation:

The Interventional Neuroradiology Department, Fondation Rothschild, Paris, France

⇒ PubMedで読む[PMID:31462188]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2019 Oct
巻数:50(10)
開始ページ:2805

【背景】

頭蓋内主幹動脈の塞栓性脳梗塞に対して実施される血行再建術(機械的血栓除去術)の周術期に血圧をどのように管理すべきかについて,未だ十分なエビデンスはない.2012年1月以降に報告された文献を対象にシステマティックレビューを行い,周術期の血圧管理が機能予後にもたらす影響に関して調査した.全576編の報告から,対象基準に合致する9編(前方循環における塞栓性脳梗塞患者1,037例)が対象となった.1,037例中573例が全身麻酔下に血行再建術が実施されていた.血圧モニタリングの多様性,評価の対象となった血圧パラメーターの多様性のために,メタアナリシスは実施できなかった.

【結論】

単変量解析では,5編の文献が血圧パラメーターと機能予後との間に有意の相関があったと報告している.多変量解析では,5編中3編を通して,機能予後不良と相関する血圧パラメーターが,8項目挙げられていた.これらのパラメーターは,①平均血圧基準値からの低下幅(例: 基準血圧からの40%以上の低下など),②平均血圧最低値(例:80 mmHg以下など)に大別された.残り4編の文献では,血圧パラメーターと機能予後との間に有意の相関がないとされていたが,この4編中3編の研究において,周術期に厳格な血圧管理(収縮期血圧:140~180 mmHg)が実施されていた.

【評価】

本研究は,メタアナリシスは実施できていないが,血行再建術(機械的血栓除去術)における血圧管理に関する過去の報告のシステマティックレビューである.この研究を受けて,血行再建術において,機能予後不良を招かずにすむ当座の血圧管理目標として,平均血圧を70~80 mmHg未満にしないこと,平均血圧の低下幅を基準血圧の40%未満に留めておくこと,収縮期血圧を140~180 mmHgの高めに維持しておくことをあげることが出来るように思う.
虚血性脳血管障害に伴う血圧上昇は,虚血組織への灌流を改善するための生理的な反応である(参考文献1).このこと勘案すれば,血圧が下がる状況や,あえて血圧を下げる処置が,脳梗塞の機能的予後の悪化に関与することは想像に難くない.急性期血行再建には,tPAを用いた血栓溶解療法の他,血栓回収術中のヘパリンの使用など,脳内出血のリスク要因もあるが,急性期脳梗塞診療においては,脳出血のリスクを避けるための降圧より,血圧を高めに維持することの方が重要かも知れない.全麻下血行再建術か鎮静・局麻下血行再建術かもこの観点から比較検討されるべきである(文献2).
いずれにしてもランダム化試験が望ましい.

執筆者: 

大庭秀雄   

監修者: 

有田和徳

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