髄膜腫におけるTERT変異はWHOグレードと独立した予後不良因子である

公開日:

2020年3月16日  

最終更新日:

2020年3月17日

Poor prognosis associated with TERT gene alterations in meningioma is independent of the WHO classification: an individual patient data meta-analysis.

Author:

Mirian C  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Copenhagen, Denmark

⇒ PubMedで読む[PMID:32041819]

ジャーナル名:J Neurol Neurosurg Psychiatry.
発行年月:2020 2020
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

髄膜腫におけるTERT(Telomere Reverse Transcriptase)遺伝子変異陽性型(TERT-alt)は再発との関係が示唆されているが,生命予後との関係については充分に明らかとはなっていない.Copenhagen大学のMirianらは過去の8報告からTERT-alt髄膜腫59例とTERT プロモーター遺伝子変異陰性型(TERTp-wt)髄膜腫618例の患者個別データを集積し,解析をおこなった.WHOグレード毎のTERT-altの頻度はグレードI:4.7%,グレードII:7.9%,グレードIII:15.4%であった.

【結論】

再発なし生存は,TERT-alt群はTERTp-wt群に比して有意に短かった(14ヵ月 vs. 101ヵ月,HR:3.74).OSもTERT-alt群はTERTp-wt群に比して有意に短かった(58ヵ月 vs. 160ヵ月,HR:2.77).
TERT-altはWHOグレードとは無関係に予後に影響を及ぼした.すなわちWHO-I/IIでTERT-altの患者ではWHO-IIIでTERTp-wtの患者よりも再発率は4.8倍高く,死亡率は2.7倍高かった.

【評価】

テロメラーゼは真核生物の6塩基(TTAGGG)を単位とする反復配列からなる染色体末端(テロメア)を伸張する酵素である.多くの癌細胞ではテロメラーゼの活性化が認められ,これが細胞分裂のたびに短縮するテロメアを延伸させ,癌細胞の無限の分裂増殖=不死化をもたらしている.テロメラーゼは逆転写酵素TERT(Telomere Reverse Transcriptase)とRNAサブユニット(TERC:Telomere RNA Component)からなる.最近,種々の癌腫(悪性黒色腫,肉腫,肝細胞癌,膀胱癌)において,TERTプロモーター遺伝子の2ヵ所のホットスポットに点突然変異(C228TまたはC250T)が起こり,転写因子であるEts1の新たな結合部位を発生させることによりテロメラーゼの転写が亢進することが明らかになった.TERT変異は脳腫瘍の中では膠芽腫において55~83%と高率に認められ,びまん性・退形成型星細胞腫では20%前後と比較的低い(文献1,2,3).最近,髄膜腫の一部(6.3~9.8%)にもTERT変異が発見され,再発との関係が示唆されてきた(文献4,5).
本稿は,2014年以降に発表されたTERT変異の有無と髄膜腫の臨床像に関する8本の論文の著者から677例の患者個人データを入手して,TERTが髄膜腫患者の予後に与える影響を検討したものである.59例のTERT変異のうちで判明した変異の内訳はC228T:27例,C250T:11例,C228A:1例,C228T+C250T:1例,TERTプロモーター遺伝子融合:3例であった.
本研究の結果,ERT変異群では再発が多いというにとどまらず,死亡にも強く関連することが明らかになった.しかも,それはWHOグレードと再発/死亡の相関をはるかに凌駕しており,たとえWHOグレードI~IIであったとしてもTERT変異があれば,WHOグレードIIIの髄膜腫より死亡率は2.7倍高かった(95% CI 1.8~4.1).
より多数での検討で,この事実が確認され,TERT変異検出法が普及すれば,将来TERT変異群を髄膜腫グレードIVと定義する時が来るのかも知れない.いずれにしてもTERT変異陽性髄膜腫はたとえ全摘が達成されても,厳重にフォローアップされなければならない.また,摘出度,放射線照射,化学療法がTERT変異陽性髄膜腫患者の再発や生命予後に与える影響についてもこれから検討されなければならない.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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