脳出血後の抗血小板剤投与は死亡や機能予後不良(mRS:4~6)のリスクを高めない

公開日:

2020年3月16日  

最終更新日:

2020年3月17日

Antiplatelet Therapy After Spontaneous Intracerebral Hemorrhage and Functional Outcomes.

Author:

Murthy SB  et al.

Affiliation:

Clinical and Translational Neuroscience Unit, Feil Family Brain and Mind Research Institute, Weill Cornell Medicine, Cornell University, NY

⇒ PubMedで読む[PMID:31895618]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2019 Nov
巻数:50(11)
開始ページ:3057

【背景】

脳出血後の抗血小板剤投与はその後の血栓塞栓イベント予防に有効であることが報告されているが,機能予後や死亡率との関係は明らかではない.本研究は,コーネル大学のMurthy SBらによる,脳内出血に関する3つの登録研究(MGH:1,854例,VISTA-ICH:762例,Yale:187例)の合計2,801例の患者個別データ基にした,脳出血後抗血小板投与(再投与+新規投与)が生存と機能予後に与える影響を検討したものである.一次エンドポイントは全死亡+発症3ヵ月目の機能予後不良(mRS:4~6)の複合.

【結論】

合計288例(10.3%)で抗血小板剤投与が開始された.開始までの期間は3研究で,それぞれで11日,39日,7日であった.抗血小板剤投与群は非投与群に比べて死亡率の増加を伴わず(ハザード比,0.85;95% CI,0.66~1.09),死亡例と機能予後不良例(mRS:4~6)を併せた割合の増加を伴わなかった(ハザード比,0.83;95% CI,0.59~1.16).血腫の部位(深部か脳葉か)に分けて検討しても,結果はいずれも同じであった.

【評価】

脳出血後の抗血小板剤投与に関しては,2019年に発表された英国におけるRCT(RESTART,n=537)が良く知られている(文献1).こちらの研究では抗血小板剤投与群では,非投与群に比較して,脳内出血の再発は少なく(4年間の経過観察中4% vs 9%,調整後ハザード比0.5,p=0.060),大出血イベントの発生は差が無かった(7% vs 9%,整後ハザード比 0.71,p=0.27).ただし,このRCTでは抗血小板剤の投与開始は出血発症後76日(中央値)とかなり遅く,また機能予後や死亡率に関しては検討されていない.一方,2018年に発表された米国のERICH研究(多施設後方視)では,抗血小板剤使用群の方が抗血小板剤非使用群に比較して,3ヵ月目の機能予後良好群(mRS:0~2)の割合が小さかった(36.5% vs 40.8%;p=0.021)が,傾向スコアマッチングでは2群間に差が無かった (35.5% vs 43.9%;p=0.105)(文献2).
本報告は3つの登録研究の患者個人データを基にして,脳内出血後の抗血小板剤の投与は,出血部位(深部か脳葉か)に関係なく,全死亡も機能予後不良症例の割合も増やさないことを明らかにした.著者らはこの結果を受けて,今後,効果とリスクに焦点をあてたRCTが実施されるべきであると述べている.

これまでのエビデンスの積み重ねで,脳出血後の患者であっても,必要性があれば抗血小板剤の再開や新規投与を手控える必要がないことは既に示されているように思う.一方,抗血小板剤の開始時期の検討は急務である.本研究のベースとなった3つの登録研究における抗血小板剤開始までの期間(いずれも中央値)は11日,39日,7日,先行するRESTART研究では76日とかなりの差がある.

執筆者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する