公開日:
2020年5月3日最終更新日:
2021年9月30日Large-Vessel Stroke as a Presenting Feature of Covid-19 in the Young
Author:
Oxley TJ et al.Affiliation:
Mount Sinai Health System, New York, NY, USAジャーナル名: | N Engl J Med. |
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発行年月: | 2020 Apr |
巻数: | Online ahead of print. |
開始ページ: |
【背景】
武漢からの報告では,COVID-19で入院した患者における脳卒中の頻度は5%前後と報告されている(文献1).また,2004年のシンガポールにおけるSARSの大流行に際して脳主幹動脈閉塞の発生が報告されている(文献2).COVID-19による凝固異常と血管内皮の機能異常も報告されている(文献3).Mt. Sinaiヘルスシステムから,50歳以下のCOVID-19陽性患者における脳主幹動脈閉塞の5症例がCorrespondenceとしてNEJMに速報された.
【結論】
年齢は33~49歳.女性1名,男性4名.既往は糖尿病2名,高血圧+高脂血症1名.4名は過去に内服歴はなかった.入院時NIHSSは13~23点.閉塞血管はICA1名,MCA3名,PCA1名.
COVID-19の症状としては咳や発熱が2名,倦怠感が1名で,2名は無症状であった.
3名に血栓除去が施行された.受診後7~19日の段階で,3名は退院して,1名はストロークユニットに入り,1名は多臓器不全で人工呼吸中.
【評価】
過去にリスク因子が無いか少ない若年者で,脳主幹動脈閉塞が発症し,後にCOVID-19陽性が判明した5症例の報告である.この5例はMt. Sinai病院で3月23日~4月7日の2週間に経験した症例であるが,同院でそれ以前の12ヵ月の間に経験した50歳以下の脳主幹動脈閉塞の患者数は0.73人/2週間に過ぎなかった.
これが偶然にある時期に一病院に集中した結果なのか,COVID-19感染者に多い病態なのか不明であるが,注目すべき報告である.COVID-19感染者多発地域においては急性期脳卒中治療に関わる専門医,特に血栓除去治療に関わる血管内治療医は,脳主幹動脈閉塞患者の診療では,COVID-19感染のリスクを心にとめて対処しなければならないことを示唆している.
なお,この5名のうち2名は,COVID-19が蔓延している病院受診をためらった結果,治療開始が遅れた可能性があると著者らは推測している.今後,日本においても「医療崩壊」が現実のものになれば,COVID-19感染者の脳主幹動脈閉塞に対する治療はより困難なものになるかも知れない.
また,日本でもCOVID-19感染者の自宅での死亡例が報告されつつあるが,これら「急変死亡」の中に脳主幹動脈閉塞がどのくらい存在するのか,検討すべき課題である.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Li Y, et al. Acute cerebrovascular disease following COVID-19: a single center, retrospective, observational study. (preprint) March 13, 2020.
- 2) Umapathi T, et al. Large artery ischaemic stroke in severe acute respiratory syndrome (SARS). J Neurol 251: 1227-31, 2004.
- 3) Zhou F, et al. Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China:a retrospective cohort study. Lancet 395: 1054-62, 2020.