血急性期脳梗塞に対する血栓除去は途上国における一般病院でも有効か:ブラジル

公開日:

2020年6月13日  

最終更新日:

2020年6月13日

Thrombectomy for Stroke in the Public Health Care System of Brazil

Author:

Martins SO   et al.

Affiliation:

Departments of Neurology, Federal University of Rio Grande do Sul, Brazil

⇒ PubMedで読む[PMID:32521133]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2020 Jun
巻数:382(24)
開始ページ:2316

【背景】

急性期脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓除去術はスタンダードな治療になりつつあるが(文献1,2),これまでの報告は医療資源が豊富な欧米や,大学附属病院などの先進施設からのものが多く,発展途上国や一般病院でも適応できるのかの検討は少ない.本論文はブラジルにおける公的ヘルスケアに属する12の公的病院におけるRCTの結果である.一次エンドポイントは90日目の機能予後(mRS:0~6).目標症例数690例.

【結論】

本試験は221例(血栓除去群111例,対照群110例)が登録された段階で,中間解析での血栓除去群の明確な有効性確認のため,その後の新規登録が中止された.両群とも約70%が経静脈的tPAを受けた.90日目mRSは血栓除去群の方が良好な側に分布した(共通オッズ比:2.28,95%CI:1.41~3.69;p=0.001).良好な機能予後(mRS 0~2)の割合は血栓除去群で高かった(35.1 vs 20%,差は15.1%,95%CI: 2.6~27.6).症候性頭蓋内出血は両群とも 4.5%に発生した.

【評価】

これまで,少なくとも8個のRCTで急性期脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓除去術の有効性が証明されている.一方,ブラジル政府は,医療資源の乏しいブラジルにおいても,その効果が一般化できることが証明されているわけではないと主張していた.しかし,同国政府は,ブラジルの保険制度(皆保険)の中でも血栓除去術が有用かどうかを検討するこの研究(RESILIENT:回復)をサポートする基金を支出することには同意をした.ただし,研究で用いた血栓除去術用のデバイスは,メーカーから供与されている.これが,この研究の背景である.また,最終的に12施設が本件研究に参加しているが,研究開始段階では1センターだけが血管内血栓除去の経験があり,他のセンターでは血管内治療医がその施設か他施設で最低5例の血管内血栓除去の経験を積んでから研究参加の資格を得たという,まさしく現在進行形でトレーニングを受けながらの臨床研究であった.
その結果,血栓除去術群でも90日死亡率は24%と,従来の報告に比較すれば少し高い.これには,病院前システム,医療資源,入院後ケア,リハビリなどの違いが反映されている可能性はある.一方,良好な機能予後の割合に関しては,血栓除去術群の方が対照群より有意に高く,発展途上国の公的病院でも急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓除去術が有効であることを示した.

2018年のOECD統計によればブラジルの国民一人あたりの健康関連支出(Health spending)は1300米ドル/年で,日本を含めたOECDの平均4000米ドルの約1/3に過ぎない(文献3).一方,ブラジルには日本の国民皆保険のようなSUSと呼ばれる公的保険があり,任意での全員加入で,薬剤費を除きすべて無料である.ただし,各医療行為に対するSUSの給付額は,民間医療保険に比較して極めて低い.
したがって,今後ブラジルのような限られた医療資源の国家や地域で,機械的血栓除去術が標準的な治療として定着するためには,治療必要数(NNT),医療費,費用-効果の解析も必要であると思われる.

執筆者: 

有田和徳

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