小児水頭症に対する中脳水道ステント術の長期予後

公開日:

2020年7月23日  

最終更新日:

2020年7月23日

Endoscopic aqueductal stenting in the management of pediatric hydrocephalus

Author:

Guida L  et al.

Affiliation:

Department of Pediatric Neurosurgery, Hôpital Necker, Université de Paris, France

⇒ PubMedで読む[PMID:32619984]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2020 Jul
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

小児水頭症に対する脳室腹腔シャントは,テント上下の髄液スペース圧格差をうみだす結果,長期的には中脳水道の閉塞を来し,孤立性第4脳室や吻側中脳症候群を引き起こすことがある.パリ大学のGuidaらは,この病態に対する中脳水道ステント術の17例を報告している.まず,1個は内視鏡用,他の1個は脳室チューブ用の2個のバーホールを作成した.続いて内視鏡下,バルーンで中脳水道を緩徐に拡大させ,その後,脳室チューブ(先端数cmの範囲に側孔を複数追加したもの)の先端を中脳水道内に挿入.チューブの他端は皮下に固定か皮下に設置したオンマヤリザバーに接続した.

【結論】

平均6歳時にステント留置手術が施行され,追跡期間は平均47.5ヶ月.ステント留置の理由は,孤立性第4脳室47%,吻側中脳症候群35%,腫瘍による中脳水道閉塞予防12%,原発性中脳水道狭窄6%.
ステント術後,10例では水頭症関係の追加手術は不要となった.17例全体で,ステント術後の水頭症関連の手術はステント術前に比較して有意に減少した(4.7→1.6回,p=0.016).

【評価】

小児水頭症に対する(側)脳室腹腔短絡術後の長期経過の中で中脳水道が閉塞することは稀でなく,その結果,第四脳室が周囲の髄液腔から孤立する孤立性第四脳室は既にダンディによって1921年に報告されている.孤立した第四脳室内でも脈絡叢からの髄液産生が持続するため,第四脳室は次第に拡大して,小脳や脳幹徴候を来すようになる.一方,中脳水道閉塞に側脳室シャント機能不全が伴うと第3脳室後端-吻側中脳水道が拡大し,周囲の神経核や神経線維ネットワークを障害し,垂直性眼球運動障害,錐体路徴候,パーキンソン症候群,記憶障害,無動性無言など吻側中脳症候群を呈する(文献1,2).
従来,孤立性第四脳室に対しては第四脳室シャントが,吻側中脳症候群に対してはシャント再建,第三脳室底開窓術が選択されてきたが,2000年頃からテント上下の髄液スペース圧格差の解消を目指した中脳水道ステント術の報告が出てきた(文献3).
本研究は17例という多数例で,続発性(原発性を一部含む)中脳水道閉塞に対するステント術の有効性を示した.多変量解析では,腫瘍性,感染性,神経管閉鎖不全に伴うもの,脳室内出血などの水頭症の原因疾患のうちで,脳室内出血が唯一の長期中脳水道開存の相関因子であったという.
患者の内訳を見ると,中脳水道ステント術の前に,1患者あたり平均4回以上の水頭症関連手術が施行されており,治療に難渋した症例であることがわかる.
確かに孤立性第四脳室は中脳水道閉塞に対するステント術の良い適応と思われるが,吻側中脳症候群に対しては内視鏡下第三脳室底開窓術とステント術のどちらを選択すべきなのか,明確な指針は示されていない.また,本シリーズでも中脳水道ステンティングの前に,可能であれば内視鏡下第三脳室底開窓術を実施したと記載されており,実際はどちらが効いたのかわからなくなっている.
今後,症例の蓄積を通して,続発性/原発性の中脳水道閉塞に対するステント術の適応が明確になることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

大吉達樹

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