IDH変異グリオーマにおけるCDKN2Aホモ接合性欠失が予後に及ぼす影響

公開日:

2020年9月4日  

最終更新日:

2020年9月14日

The prognostic significance of CDKN2A homozygous deletion in IDH-mutant lower-grade glioma and glioblastoma: a systematic review of the contemporary literature

Author:

Lu VM  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Lois Pope Life Center, University of Miami Miller School of Medicine, Miami, FL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32385699]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2020 Jun
巻数:148(2)
開始ページ:221

【背景】

Cyclin Dependent Kinase Inhibitor 2AはCDKN2A(p16)によりコード化されているがん抑制タンパク質で,その変異は数多くの癌の発生に関わっており,神経膠腫においても重要な役割を担っていることが判ってきている.マイアミ大学のLuらは,最近の文献をレビューしてIDH変異型低悪性度グリオーマ(LGG)とIDH変異型膠芽腫におけるCDKN2A遺伝子ホモ接合性欠失の臨床的意義を検討した.対象は9報告2193例で,LGG1756例(80%),膠芽腫437例(20%).CDKN2Aホモ接合性欠失の頻度は中央値22%(9~43%)であった.

【結論】

Kaplan-Meier解析では,CDKN2Aホモ接合性欠失腫瘍は,LGGにおいて,PFS(中央値:31 v 91ヵ月),OS(61 v 154ヵ月)共に短かった.膠芽腫においてもPFS(16 v 30ヵ月),OS(38 v 86ヵ月)共に短かった.多変量解析では,CDKN2Aホモ接合性欠失は,LGGにおいてもGBMにおいても短いPFS,OSの有意の予測因子であった.

【評価】

本研究では,既報のレビューを通して,IDH変異グリオーマにおけるCDKN2Aホモ接合性の欠失は,特にLGGにおいて予後不良因子であり,時には膠芽腫よりも悪性の臨床経過を示すことを明らかにした.
かつては,グリオーマにおけるIDH変異とCDKN2A変異は相互排他的(mutually exclusive)であると考えられていた.しかし,最近の報告ではCDKN2A変異はIDH変異グリオーマの10~40%で観察されることが判っている.
IDH変異グリオーマにおけるCDKN2A変異が臨床的な悪性経過を示す詳細なメカニズムは未だ不明である.現段階ではCDKN2A変異はセルサイクル抑制蛋白であるp14ARFとp16INK4Aの機能を変化させ,MDM2蛋白の干渉隔離の低下を通してp53の機能を弱めるため,細胞の野放図な増殖と発癌につながっているものと想定されている(文献1).
cIMPACT-NOWは2016年に発表されたWHO脳腫瘍の分類後の脳腫瘍に関する新知見を集約・整理してアップデートするための国際的なコンソーシアムで,これまでにいくつかの重要な提言を行ってきた.IDH変異グリオーマに関してもCDKN2Aホモ接合性欠失腫瘍の臨床データの蓄積を受けて,最新のcIMPACT-NOW update-5 and 6は,少なくともIDH変異astrocytomaにおいては現在用いられている組織学的グレーディングやLGG/膠芽腫などの用語は将来再考される必要性があることを示唆している(文献2,3).次回のWHO脳腫瘍分類の改訂ではこの視点が反映される可能性が高い.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

比嘉那優大

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する