どこまで延ばせる血栓除去までの時間:16時間目以降の成績(ソウル大学の150例での解析)

公開日:

2020年9月7日  

最終更新日:

2020年9月23日

Endovascular Treatment After Stroke Due to Large Vessel Occlusion for Patients Presenting Very Late From Time Last Known Well

Author:

Kim BJ  et al.

Affiliation:

Department of Neurology and Cerebrovascular Center, Seoul National University Bundang Hospital, Seongnam-si, Republic of Korea

⇒ PubMedで読む[PMID:32777014]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2020 Aug
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

現在,脳主幹動脈閉塞に対する血管内治療(EVT)のゴールデンタイムは発症後6時間で,それより遅い場合は神経徴候と画像診断に基づく治療適応判定を行い,最終健常確認から16時間以内に血栓除去を始めることが勧められている(グレードA)(文献1,2,3).
では,もっと遅くに病院にたどり着いた患者ではどうするのか.ソウル大学神経内科・脳血管センターは急性期脳梗塞患者6408例から最終健常確認後16時間以上たって着院した前方循環主幹動脈閉塞患者150例を抽出し,解析した.150例の臨床/画像の諸指標中央値はNIHSS:12,虚血コア体積:11.5mL,ペナンブラ体積:55mL,ミスマッチ比:4.0であった.

【結論】

150例中,過去のRCTのEVT適応画像基準に合致したのはDAWN基準33%,DEFUSE 3基準39%,ESCAPE基準38%であった.実際には,EVTは24例(16%)に施行された.24例の最終健常確認-着院中央値は26.3(IQR:19.1~48.2)時間であった.
傾向スコアマッチング解析(対照群:内科治療の48例)では,EVT群は対照群に比して90日後の機能予後良好(mRS:0~2)は有意に多く(調整オッズ比11.08),mRSシフトの改善と相関した(共通調整オッズ比5.17).2型脳実質内出血の頻度はEVT群で高かった(13% v 3%).

【評価】

著者らはこの結果を受けて,前方循環主幹動脈閉塞では最終健常確認から16時間以降に着院した患者でも,少なくとも数日間はミスマッチ領域の充分な広さがある症例は全体の1/3いると想定され,EVTによって利益を受ける可能性があると結論している.血管内治療医にとってはモチベーションのあがる論文である.
実際にEVTが施行された24例の最終健常確認-着院中央値は26.3(IQR:19.1~48.2)時間であったが,発症時間不明が15例(63%)であったとのことで,実際の発症-着院時間はより短かった可能性がある.しかし一方,興味深いのは,最終健常確認から着院までが24時間を超えた109例で傾向スコアマッチング解析を行っても,EVTはmRSシフトの改善と相関していた(共通調整オッズ比10.54[95% CI,2.18~59.34]).したがって最終健常確認-着院が24時間を超えても症例を選べば,10日まではEVTによって利益を受ける可能性があるということになる.
本論文で少し気になるのは,著者らのEVTはendovascular treatmentのことであって,必ずしもendovascular thrombectomyではない.もしかすると,血栓回収だけではなく血管拡張術やウロキナーゼの動注なども含んでいる可能性がある.
同様に,発症後24時間を超えて10日までに実施された前方循環主幹動脈閉塞患者に対する血栓回収術の効果はピッツバーグ大学などの米国の3つの包括脳卒中センターからも報告されている(文献4).これによれば,最終健常確認から着院までの時間が24.1時間から155.7時間の患者21例が,時間の制限を除けばDAWN試験の条件を満たしておりEVTが実施された.その結果,血行再開率(TICIスケール),90日後の機能的自立(mRS:0~2),症候性頭蓋内出血の頻度は24時間以内にEVTが開始されたDAWN試験群と差はなかったという.
ソウル大学神経内科・脳血管センターは,この研究期間の7年間で約8032人の急性期脳卒中患者を受け入れている大規模脳卒中センターであるが,上述の米国3施設同様,ここでも虚血脳のペナンブラ体積やミスマッチ比などを自動的に定量評価するRAPIDシステム(iSchemaView)が使用されている.このような定量的・自動解析システムの普及によって,本論文の著者らが提示したようなslow progressor(発症後数日を経ても救済可能なペナンブラが存在する症例)の検出はより容易になると思われる.
今後,発症24時間を超えた前方循環閉塞症例に対する定量的画像解析に基づいたEVTの有効性に関するRCTが実施されることを期待したい.
なお,本研究では血腫が梗塞サイズの30%以上で相当の占拠性効果を示す2型脳実質内出血の頻度は,数値上はEVT群で高かったが(13% v 3%),統計学的な差はなかった(調整オッズ比4.06[95% CI,0.63~26.30])という.しかし,これには症例数が少ないことが影響している可能性が高く,注意して読むべきデータである.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岐浦禎展、西牟田洋介

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