血清マグネシウム低濃度は脳室ドレナージ術の出血性合併症を増加させる

公開日:

2020年9月7日  

最終更新日:

2020年9月14日

Magnesium and Risk of Bleeding Complications From Ventriculostomy Insertion

Author:

Maas MB  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Northwestern University, Chicago, IL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32772685]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2020 Sep
巻数:51(9)
開始ページ:2795

【背景】

頭蓋内出血におけるマグネシウム血中濃度の影響に関しては複数の報告がある(文献1,2).一方,脳室ドレナージ術(EVD)におけるマグネシウム濃度と出血性合併症との関連は不明であった.本稿は2006年から12年間に発症した脳出血(ICH)ならびにくも膜下出血(SAH)を対象に,血清マグネシウム濃度と脳室カテーテル通過部出血(catheter tract hemorrhage;CTH)の関連を検証した単施設前向き観察研究である.対象はEVD 327症例(原因はICH 116例,SAH 211例).全EVD中15.3%にCTHを認めた(ICH18.1%,SAH13.7%).

【結論】

CTH群では血清マグネシウム濃度が低かった(1.8 v 2.0 mg/dL,p<0.0001).また,血清マグネシウム濃度が高いほどCTHは低頻度であった(OR 0.68/Mg 1mg/dL,p<0.0001).これは年齢,性,EVD施行前抗血小板剤投与,EVD施行前の脳室内出血の程度(Graebeスコア)などの因子を調整後も(aOR 0.67,p<0.0001),ならびにICH群,SAH各群に分けてもその影響は同様であった(aOR 0.47 p=0.00013,aOR 0.70 p=0.00095).

【評価】

著者らはEVDにおける出血合併症の予測マーカーとしての血清マグネシウム濃度の有用性が示唆されたと結論している.血清マグネシウム濃度の上昇は第IX因子と組織因子/VII因子の活性化を通して,第X因子を活性化して止血を促進する.
これまでも術中出血に対応する目的で複数のマーカーが考案されてきたが,過凝固症患者を除いてそれらの有用性は乏しかった(文献3).
脳室ドレナージ術は脳外科領域で汎用される手技である.一方,その視認性の低さのため出血性合併症への対応が遅れる可能性があり,発症予測因子の同定は重要な課題であった.
EVDの対象となる患者群ではしばしば抗血栓薬の内服が問題となる.本コホートにおいて,発症前の抗凝固薬内服はICHの13.9%,SAHの0.9%で認めた.また,抗血小板薬内服は全体の30%に認め,うち62%で血小板輸血,19%でデスモプレシン投与がEVT前に行われた.感度解析では血清マグネシウム濃度の影響は抗血小板薬投与群で大きかった(マグネシウムOR 0.75 vs. マグネシウム×抗血小板剤OR 0.62).
硫酸マグネシウム投与は脊髄手術や副鼻腔手術において既に止血効果が報告され,安全性の高い手法とされている(文献4,5).本稿ではEVD前の14%に硫酸マグネシウムの投与がなされており(中央値2g),投与量とCTHリスクとの逆相関が示唆された(OR 0.67/MgSO4 1g,[0.40~0.97]).
本コホートにおける施術環境は,ICUが78%,手術室もしくは血管撮影室が22%と,ベッドサイドでの施行頻度が高いが,他のより複雑な脳外科手術ではどうなのか興味深い.
本試験は単施設の観察研究であり,今後大規模コホートでの立証の上,内視鏡下生検や深部刺激装置植え込み術など類似した手技,あるいは経鼻経蝶形骨洞手術における適用にも注目したい.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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