脳主幹動脈再開通治療(tPA,血栓除去)は脳梗塞後けいれんの頻度を増加させない

公開日:

2020年9月7日  

最終更新日:

2020年9月23日

Incidence and Association of Reperfusion Therapies With Poststroke Seizures: A Systematic Review and Meta-Analysis

Author:

Lekoubou A  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Penn State University, 30 Hope Dr, Hershey, PA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32772682]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2020 Sep
巻数:51(9)
開始ページ:2715

【背景】

急性期脳主幹動脈閉塞に対する標準的治療となった経静脈血栓溶解(tPA)と機械的血栓除去(MT)であるが,血管再開通に伴う特有の有害事象として血管性浮腫や梗塞巣の出血化が挙げられる.この他に,再開通治療後のけいれんが報告されているが,そのリスクに関しては詳細でない.本稿は1995~2019年に血栓再開通治療後のけいれんに関して報告された25報,13,753例を対象に治療法毎のけいれんリスクを算出したものである.

【結論】

592例(5.9%)がけいれんを発症した.tPA単独,MT単独,両者の併用におけるけいれんの頻度はそれぞれ,6.1%,5.9%,5.8%であった.遅発性けいれんおよび早期けいれん(<7日)の頻度は,6.7%と3.1%であった.
tPA治療を受けた患者のtPA治療を受けていない患者に対するけいれんのオッズ比は1.24(95% CI,0.75~2.05)であり,リスクの有意な上昇はなかった.

【評価】

脳主幹動脈再開通治療後のけいれんの原因としては,梗塞巣の出血化,再開通症候群,tPA自身の神経毒性(文献1)などが関与していると推測されている.
本研究は,再開通の方法,tPA使用の有無に関わらず,脳主幹動脈再開通治療後のけいれんの頻度は約5.9%(95% CI,4.2%~8.2%)で一定していることを明らかにした.この頻度は,以前に報告されたMTを受けた患者のけいれんの頻度に関するメタアナリシスの結果9.5%(95% CI,3.1%~19.6%)(文献2)よりかなり少ない.この違いは本論文のメタアナリシスの対象論文数が既報の3倍以上であり,症例数もはるかに多い(13,753例 v 4,362例)ということが反映しており,本研究のデータの方がより臨床現場の実態に近いはずであると著者らは言う.
また,中国からの102,008例を対象とした全脳卒中後けいれんの解析では,その頻度は6.93%と報告されており(文献3),本研究の頻度とほぼ一致している.すなわち急性期の脳主幹動脈再開通治療が脳梗塞後けいれんの頻度を増加させるわけではないようである.
一方,けいれんのオッズは,tPA治療,心原性梗塞,主幹動脈閉塞で数値上は高くなったが(OR:1.24[95% CI,0.75~2.05])(OR:1.30[95% CI,0.96~1.75])(OR:1.31[95% CI,0.97~1.77]),有意ではなかった.しかし,梗塞巣の出血化と皮質領域を含む梗塞巣はけいれんのオッズを有意に上昇させた(OR:2.38[95% CI,1.59~3.56])(OR:3.49[95% CI,2.40~5.08]).
今後,本研究でけいれんのリスクを高めることが推測された梗塞巣の出血化症例や皮質領域を含む梗塞症例に対する予防的な抗けいれん剤の投与の必要性に関しては前向き研究で検討される必要性がある.また,実際の血流再開の程度(TICI 2b-3)が,けいれんのリスクにどう影響するのかも興味深い.

執筆者: 

有田和徳

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