クモ膜下出血後のたこつぼ心筋症では,合併する脳血管攣縮に対する積極的な血管内治療が予後を改善する

公開日:

2020年9月23日  

最終更新日:

2020年9月28日

Predictors of the development of takotsubo cardiomyopathy in aneurysmal subarachnoid hemorrhage and outcomes in patients with intra-aortic balloon pumps

Author:

Catapano JS  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Barrow Neurological Institute, St. Joseph’s Hospital and Medical Center, Phoenix, Arizona, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32886915]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

たこつぼ心筋症(TC)は1990年に広島市民病院の佐藤らによって最初に報告された(文献1),カテコラミンの過剰放出が原因と考えられる左心室心尖部の一過性収縮低下を示す心疾患である.動脈瘤によるクモ膜下出血患者(aSAH)では約1%に認められ,その場合の死亡率は20~26%に達する(文献2).フェニックスBNI脳外科では,aSAH患者1096例のうちTCを26例(2.4%)経験し,全例で大動脈バルーンパンピング(IABP)で心機能を補助した.本研究はaSAH患者におけるTC発症に関わる因子,予後因子を検討したものである.TCの診断には改変メイヨークリニック基準を用いた(文献3).

【結論】

多変量解析では,aSAH患者におけるTC発生に関わる危険因子は女性,HHグレード>III,動脈瘤径>7mm,臨床的な血管れん縮であった.TC患者では全例へのIABPにもかかわらず,非TC患者に比較して機能予後不良(mRS>2)(77 vs. 47%,p=0.004),死亡(27 vs. 11%,p=0.018)の割合が高かった.しかし,TCでかつ症候性血管れん縮が認められた21例中,血管内手技による積極的な脳血管れん縮の治療を行った14例では,それを実施しなかった7例に比較して,転帰は良好であった(mRS≦2)(57 vs. 0%,p=0.04).

【評価】

本報告で先ず注目させられるのは,aSAH後のTC患者全員に対してIABPを行ったという事実である.既にaSAH後のTC患者に対するIABPの有用性に関して,いくつかのケースシリーズが報告されているが(文献4,5),多数例での検証はない.BNIではIABPというかなり大きな侵襲(この26例では1例で敗血症,1例で下肢の虚血が生じた)を伴う心機能補助を行ったにもかかわらず,TC患者26例の最終追跡時死亡率は27%で,従来のIABPを用いていないシリーズの死亡率20~26%と差はない.
注意すべきは,TC自身が悪い機能予後や高い死亡率につながったかどうかである.TCは多くの場合一過性で(aSAHの有無と関係なく),全てのTC患者の院内死亡率は概ね1%に過ぎない(文献2).したがって,機能予後不良や高い死亡率は,元来のSAHの重症度に左右され,TCはその結果に過ぎない可能性がある.従って,IABPを行っても従来の報告に比較して死亡率が変わらないというのも尤もな結果であったのかも知れない.実際TC群での死亡6例のうち5例の死亡はSAH発症後72時間以内に発生しており,死因は生存不可能な重篤な神経障害であった.
一方,血管れん縮は21例と非TC群より高頻度で認められた(81 vs. 54%,OR 2.9,p=0.037).血管れん縮が認められた21例中14例に積極的な血管内治療を行ったところ良好な機能予後を得た.彼らの言う血管れん縮に対する積極的な血管内治療とは,循環血液量の増加や昇圧治療で血管れん縮が改善しない患者に実施されたベラパミルなどの血管拡張剤の動脈内投与とバルーンによる血管拡張術である.最近のVenkatramanらの55報1571例のメタアナリシスでは,血管れん縮に対する血管拡張剤の動脈内投与は良好な血管拡張をもたらし神経症状の改善が得られることが示唆されている(文献6).
しかし,血管拡張剤の効果は一過性で,バルーン血管拡張術による血管損傷のリスクもあり,現段階で血管れん縮に対する血管内治療の評価は一定していない.
結局,本研究で示されたのはaSAH後のTCにIABPを行っても死亡率は変わらなかったということと,TC群で高頻度(81%)に認められる血管れん縮に対する血管内治療は良好な機能予後(mRS>2)をもたらしたということの2点である.
そうだろうねという結論だが,何かしらの臨床的教訓を引き出すとすれば,aSAH後のTC患者でも臆せずに血管れん縮に対する治療をしなさいということであろうか.

執筆者: 

有田和徳

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