クモ膜下出血3日以内のプロカルシトニンレベルは遅発性脳虚血(DCI)を予測する

公開日:

2020年9月24日  

最終更新日:

2020年9月28日

Procalcitonin in the context of delayed cerebral ischemia after aneurysmal subarachnoid hemorrhage

Author:

Veldeman M  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Rheinisch-Westfälische Technische Hochschule (RWTH) Aachen University, Aachen, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:32886914]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

プロカルシトニン(PCT)は,カルシトニンの前駆蛋白として甲状腺のC細胞において生成され,敗血症や全身的感染症の重症度の優れた指標として,近年臨床応用が進んでいる.
一方,クモ膜下出血後の遅発性脳虚血(DCI)は脳血管れん縮,早期脳損傷,大脳皮質拡延性抑制,脳灌流圧低下,静脈還流障害などが複合的に関与して発生すると理解され,クモ膜下出血患者の予後に大きな影響を与える.
ドイツ・アーヘン大学のVeldemanらは,過去4年間にクモ膜下出血で入院した患者のPCT濃度を毎日測定し,DCI(48.5%に発生)との関係を求めた.対象は132例(女性91例)で平均年齢55.9歳.

【結論】

発症3日以内の早期PCT値の予測能はDCIでAUC 0.661(p=0.003),予後不良(GOS-E 1~4)でAUC 0.674(p=0.003)とあまり高くはなかった.院内感染などの感染症を伴わない患者72例に限れば,PCTレベルはDCIとDCI関連脳梗塞患者で高かった(p=0.001とp=0.002).DCI患者でも,PCTレベルは効果的治療で低下し,逆に脳梗塞に発展する症例では,一旦緩やかに低下した後に再上昇した.

【評価】

クモ膜下出血は,白血球の遊走,起炎性サイトカインの放出,それに続くマイクログリアの活性化,マクロファージの遊出を通した広範囲な炎症性カスケードの活性化をもたらし,血管れん縮を惹起する.このため,白血球数,CRP濃度,IL-6濃度とDCIの相関が示唆されてきた(文献1,2,3).
甲状腺のC細胞において生成されるプロカルシトニン(PCT)は全身感染症のみならず,外傷でも上昇しており(文献4),クモ膜下出血に起因する炎症性カスケードの活性化がPCTレベルを上昇させる可能性は当然想像される.
これまでにも,クモ膜下出血患者の重症度,敗血症の発症,予後とPCTレベルの相関の報告がある(文献5,6).
本研究は従来検討されることがなかったクモ膜下出血のDCIに関わるPCT上昇の意義について検討したものである.その結果,著者らが感染なしと判定した72例のうち,DCIやDCI関連脳梗塞に至った患者ではその段階でのPCTレベルが有意に高いことを明らかにした.しかし,早期PCTがDCIを予測出来るかに関しては早期PCTの予測精度はAUC 0.661であまり高いとは言えなかった.
重症のクモ膜下出血患者では肺炎,カテーテル関連感染,尿路感染,髄膜炎を始めとする種々の感染症に陥り易いので,3日以内の早期といえども,PCTレベルの上昇が,本当にクモ膜下出血に起因する炎症のみを反映しているとは言えない可能性がある.
早期PCTによるDCI予測の精度が低いのには,このような背景があるのかも知れない.
今後,クモ膜下出血患者におけるPCTの意義に関しては他の炎症性パラメーター(白血球数,CRP,IL-1,IL-6)や感染との関係も含めて,より多数例で検討される必要がある.

執筆者: 

有田和徳

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