強化降圧治療がMRI上の大脳白質病変の進行を抑制する

公開日:

2020年10月14日  

Association of Intensive vs Standard Blood Pressure Control With Cerebral White Matter Lesions

Author:

Bryan RN, The SPRINT MIND Investigators for the SPRINT Research Group  et al.

Affiliation:

Department of Diagnostic Medicine, Dell Medical School, University of Texas at Austin, Austin, TX, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31408137]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2019 Aug
巻数:322(6)
開始ページ:524

【背景】

脳ドックや軽微な症状に対する脳MRI検査で発見される大脳白質病変(WML)は微小循環障害を反映していると考えられており,加齢,高血圧,脂質代謝異常,耐糖能異常などとの関係が示唆されている.本研究は,強化降圧治療(収縮期圧120 mmHg以下を目標)が標準降圧治療(収縮期圧140 mmHg以下を目標)に対して大脳白質病変の進行を抑制するかどうかを米国27施設で検討したRCTである.対象は50歳以上で高血圧と診断された670例(強化降圧群355例,標準降圧群315例).登録時(670例)と48ヵ月後(449例)に3TMRI装置で大脳白質病変体積と全脳体積を測定した.

【結論】

頑健線形混合モデルによる解析では,白質病変の体積は,強化降圧治療群では4.57から5.49 cm3に,標準降圧治療群では4.40から5.85 cm3に増加した(二群間の差:−0.54 cm3[[95% CI,−0.87 to −0.20]).
全脳体積は強化降圧治療群では1134.5から1104.0 cm3に,標準降圧治療群では1134.0から1107.1 cm3に縮小した(二群間の差:−26.9 cm3[95% CI,24.8 to 28.8]).
白質病変の体積変化も全脳体積変化にも2群間では有意差があったが,その差は小さかった.

【評価】

脳MRIで観察される大脳白質病変は認知機能障害や認知症の独立した危険因子である(文献1,2).以前から高血圧が脳の小血管虚血性病変(SVID),とりわけ大脳白質病変の悪化因子であることは報告されてきたが(文献3,4),降圧治療が大脳白質病変の進行を抑制するかどうかのエビデンスは不十分であった.逆に過剰な降圧が脳灌流圧の低下を招き,脳にとっては有害になるかも知れないという仮説も提起されている(文献5).
本研究では,高血圧を有する患者を強化降圧治療群(収縮期圧120 mmHg以下)と標準降圧治療群(収縮期圧140 mmHg以下)に分けて,強化降圧が大脳白質病変と脳萎縮にもたらす影響を検討したものである.その結果,大脳白質病変の進行,脳萎縮の進行ともに強化降圧治療群の方が少ないことを示した.
本研究は追跡年数が4年と短いので,今後もその差が開いていくのか,どこかで差が止まってしまうのかは不明である.また,強化降圧治療が高次脳機能,認知機能,認知症に与える影響も不明であり,今後の検討課題である.
なお,糖尿病,脳卒中,認知症,重症心不全,重症の蛋白尿を有する患者,養護施設入所中の患者は本研究の対象から除かれているので,本研究結果の不用意な一般化には注意が必要である.

執筆者: 

有田和徳

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