経頸動脈血行再建術(TCAR)は初心者でも治療プロトコール通り行えば,高い成功率と安全性を示す:692例の市販後調査(ROADSTER 2)

公開日:

2020年10月28日  

最終更新日:

2020年10月28日

Early Outcomes in the ROADSTER 2 Study of Transcarotid Artery Revascularization in Patients With Significant Carotid Artery Disease

Author:

Kashyap VS  et al.

Affiliation:

University Hospitals, Harrington Heart & Vascular Institute, Cleveland, OH, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32811386]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2020 Sep
巻数:51(9)
開始ページ:2620

【背景】

Transcarotid Artery Revascularization(TCAR)は,頸動脈ステントに際し,鎖骨上の小切開を通して,吸引+アクセス用シースを総頸動脈に挿入し,そこから脱血した血液を,フィルターを通して大腿静脈に返血しながらステントを留置する手技である.本研究は,米国と欧州の43施設で実施された市販後単アーム試験である.対象は50%以上の症候性狭窄か,80%以上の無症候性狭窄を有しながらCEAには相当のリスクが伴うと判断されたためTCARが実施された692例(ITTコホート).60例にプロトコール違反があったのでパープロトコール(PP)コホートは632例であった.

【結論】

大部分(81.2%)の術者は本試験開始までTCARの経験はなかった.手技の成功率はITTコホートで96.5%,PPコホートで97.9%であった.ITTコホートおよびPPコホートにおける30日以内の治療転帰は脳卒中(1.9%,0.6%),死亡(0.4%,0.2%),心筋梗塞(0.9%,0.9%)であった.30日以内の脳卒中/死亡/心筋梗塞の複合発生率はITTコホート3.2%,PPコホートでは1.7%であった.
TCARは治療プロトコールを遵守して実施すれば,初心者でも高い成功率と低い早期脳卒中発生率と早期死亡率を示す.

【評価】

TCAR法は,局麻あるいは全麻下(約7割)で鎖骨上に設けた小さな皮膚切開から総頚動脈を露出し,吸引と病変アクセス用のシース(Uber Flex Sheath)を挿入し,そこから脱血した血液を,フィルターを通して大腿静脈に返血しながら,ステント(ENROUTE Stent)を留置する手技である.狭窄病変への距離も近いため,胸腹動脈の動脈硬化でのアクセス不良な症例においても操作は容易であり,デバイスの病変通過時における塞栓リスクが少なくなると予想される.
先行するROADSTER試験(2012年~2014年)では,世界18施設の経験豊富な脳血管内治療医によってTCARが141症例に対して実施され,99.3%という高い手技成功率と,治療後30日目の脳卒中/死亡/心筋梗塞の複合発生エンドポイントは3.5%という高い安全性を示した(文献1).この結果をうけて,FDAは同Enroute Transcarotid Stent System(Silk Road Medical,Sunnyvale,CA)を2015年2月に承認している.
また米国血管外科学会SVS VQIに登録されたTCARと経大腿動脈法の比較(638例対10,136例)でも,多変量解析でTCARは経大腿動脈法に対して院内有害事象が有意に少ないことを示した(文献2).
さらに,SVS VQIに登録された3,286症例対の傾向スコアマッチング解析では,TCAR実施症例が経大腿動脈法実施症例より術後の死亡・脳卒中が少ないことが明らかになった(文献3).またこの論文では,対象となった北米280センターでは頸動脈狭窄性病変に対するTCARは急速に普及しており,2018年段階では経大腿動脈法とほぼ同数が実施されていることが示されている.
本論文は,米国と欧州の43施設で実施された市販後調査(ROADSTER 2)の短期(30日以内)転帰の報告である.この試験に参加した85名の脳血管内治療医の80%以上は過去にTCAR実施の経験がなかった.しかし,TCARが適用を守って施行され,治療前後のDAPT+スタチン投与などのプロトコールが遵守された症例(PPコホート)では,手技成功率97.9%,30日以内の脳卒中/死亡/心筋梗塞の複合エンドポイント1.7%であり,高い成功率と安全性が改めて確認された.
今後,ROADSTER 2も治療後1年,3年など長期の転帰が公表されると予想されるので,その結果に期待したい.
一方,これまでの試験はTCAR実施症例での実績と経大腿動脈ルート症例におけるhistorical controlとの比較であったり,傾向スコアマッチングによる比較でしかない.
当然ながら,このTCARの有用性が広く世界で認知され普及されるためには,CEAや経大腿動脈ルートとのRCTが必須である.

執筆者: 

田中俊一   

監修者: 

有田和徳

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