脳外科論文中の文献引用はどのくらい正確なのか:4大雑誌の比較

公開日:

2020年10月14日  

How accurate is the neurosurgery literature? A review of references

Author:

Montenegro TS  et al.

Affiliation:

Division of Spine and Peripheral Nerve Surgery, Department of Neurosurgery, Thomas Jefferson University and Jefferson Hospital for Neuroscience, Philadelphia, PA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32964271]

ジャーナル名:Acta Neurochir (Wien).
発行年月:2020 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

正確な文献引用は科学的な論文にとって不可欠な構成要素である.脳外科論文中の文献引用はどのくらい正確なのか.本研究は脳外科の主要な4雑誌(Neurosurgery,J Neurosurg,World Neurosurg,Acta Neurochir)に2019年に掲載された論文から無作為に60本ずつを取り上げて,引用の正確さ(citationエラーとquotationエラーの頻度)を検討したものである.citationエラーとは引用文献の参照の不正確さのため当該文献の同定を困難とするもの,quotationエラーとは著者らの言説とそれを裏付けるとして呈示されている文献の内容の不一致である.

【結論】

全体でページ数の誤記や巻数の欠落などのマイナーcitationエラーは62.1%,雑誌名の誤記などのメジャーcitationエラーは8.33%で認められた.引用文献の内容を単純化しすぎなどのマイナーquotationエラーは12.1%,引用文献の内容と著者らの主張が関係ないあるいは矛盾しているなどのメジャーquotationエラーは5.8%で認められた.4誌間で1論文当たりのcitationエラー数には差があった(p<0.05).quotationエラーが最も少なかったのはActa Neurochirであった.驚くべきことに文献リストが長い程citationエラーは少なかった.

【評価】

脳外科領域の主要な雑誌でも,著者らの主張を支持するとして引用されている文献を読むとそんな事は言っていないよねとか,その観点では議論してないよねと感じること,また文献リストの文献をWEBで検索してもひっかからないことは稀ではないが,そのような我々の実感を具体的に論証した興味深い論文である.240本の論文を徹底的に読み,文献引用の正確さ(WEB上で検索できるかを含めて)をチェックし,さらに引用文献も読んだ上で引用のされ方が正しいかどうかをチェックしたという著者らの努力に,先ず敬意を払いたい.その上でメジャーquotationエラーが5.8%であったという事実は,脳外科論文の筆者にとっても読者にとっても重大な警鐘として受け止めたい.
文献引用上の同様の不正確さは他の医学領域でも指摘されており(文献1,2,3),その頻度は10~50%である.小さなエラーであっても,データの間違った解釈,(孫引きを通しての)その持続化,ひいては臨床上の(悪い)結末をもたらす可能性がある.医学と患者ケアの進歩のためにも,文献引用はもっと正確を期すべきという本論文の著者らの主張には頷ける.
しかし,中には一流雑誌でもそんな程度なんだと安心するむきもあるかも知れない.
オンライン雑誌の増加も寄与して脳外科論文(当然投稿も)の数は右肩上がりで増加している.それに伴って査読者の負担も急増しており,文献の引用が正確になされているかまでをいちいちチェックすることが困難になりつつある.
本研究によれば,引用文献数が少ないとcitationエラーの数は有意に増加するらしいので,査読者はそのような投稿論文には特に注意すべきかも知れない.
しかし,そのようなチェックは本来,出版社や発行者の責任で行われるべきであり,おそらく将来はAIの作業にとって代わられるものであろうと予感する.
なお論文要旨では,雑誌によってcitationエラーの数には差があった(p<0.05)と記述されているが,具体的な雑誌名は挙げられていない.本文中の図を見ると,1論文当たりのcitationエラーはJ Neurosurgが最も多そうであるが,これは雑誌特有のcitationのガイドラインによるもので,著者や出版者に帰せられる責任ではないかも知れない.そのような意味でも,国際的な医学雑誌における文献引用リストの統一化は喫緊の課題と思われる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

恩地いづみ

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