米国の院内発生脳梗塞はどのように治療されているか:GWTG-Sの67,493例

公開日:

2020年11月16日  

最終更新日:

2020年11月17日

Trends in Reperfusion Therapy for In-Hospital Ischemic Stroke in the Endovascular Therapy Era

Author:

Akbik F  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Neurosurgery, Emory University Hospital, Atlanta, Georgia, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32955582]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2020 Sep
巻数:e203362
開始ページ:

【背景】

院内発生脳梗塞に対する治療の現況はどうなっているのか.本研究は,2008年からの10年間に米国脳卒中ガイドライン順守(Get With The Guidelines–Stroke)に参加する施設から登録された急性期脳梗塞2,237,793例を基に解析したものである.このうち67,493例(3.0%)が院内発生例であった.2008年と比較して2018年では全脳卒中に占める院内発生脳梗塞の割合は増えていた(3.5 vs 2.7%;p<0.001).
院内発生例のうち10,481例(15.5%)が経静脈血栓溶解治療(IVT)を受け,2,494例(3.7%)が脳血管内治療(EVT)を受けた.

【結論】

2008年と比較して2018年では,院内発生脳梗塞患者でIVTを受けた割合ならびにEVTを受けた割合とも増えていた(19.1 vs 9.1%;p<0.001と6.4 vs 2.5%;p<0.001).IVTを受けた患者では,院外発生脳梗塞患者に比較して院内発生例では発症から頭部画像診断までの時間と血栓溶解剤注射までの時間は長く(中央値33 vs 16分;p<0.001と81 vs 60分;p<0.001),歩行退院の割合は少なく(調整オッズ比0.78;p<0.001),院内死亡あるいはホスピスへの転院が多かった(調整オッズ比1.39;p<0.001).EVTを受けた患者でも同様であった.

【評価】

全虚血性脳卒中に占める院内発生の割合は2.2~10.8%で,一般に予後不良と報告されている(文献1,2,3).しかし,IVTやEVTを含めた院内発生脳梗塞患者のケアに関する大規模スタディーは少ない.
Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-S)は,米国心臓協会(AHA)および米国脳卒中学会(ASA)が実施している脳卒中患者の治療水準を向上させるための一連の取り組みで,教育・広報活動と並んで,脳卒中患者の登録を行っており,2020年の段階で既に2,637施設が参加し,389万症例が登録されている.
本論文は,GWTG-S登録研究に基づいて,過去10年間で米国における院内発生脳梗塞の割合が徐々に増えており,IVTやEVTを受ける割合は倍以上に増えているが,院外発生脳梗塞例と比較した場合,診断/初療の遅れと転帰不良が認められる事を明らかにしている.本研究では,院内発生と院外発生例との治療転帰における比較では,年齢,合併症,重症度など多くの因子を調整しているが,それでも大きな差が認められている.著者等は,調整対象以外の未知の交絡因子がこの差を生んでいる可能性もあるが,やはり症状確認から画像診断/初療までの遅れが治療転帰の差につながっていると推測している.
著者らはこの結果を受けて,院内発生脳梗塞患者と院外発生脳梗塞患者のケアには差があり,院内発生患者専用のケアプロトコールの策定・利用などこの差を埋める方途を考えるべきであると結論している.

執筆者: 

有田和徳

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