症候性内頸動脈狭窄に対する発症後24時間以内の早期血行再建治療(CEAあるいはCAS)は有効か:PIRATES試験

公開日:

2020年11月16日  

最終更新日:

2020年11月17日

Urgent Treatment for Symptomatic Carotid Stenosis: The Pittsburgh Revascularization and Treatment Emergently After Stroke (PIRATES) Protocol

Author:

Jankowitz BT  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvania, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32294211]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2020 Sep
巻数:87(4)
開始ページ:811

【背景】

症候性内頸動脈狭窄症に対するCEAは,脳梗塞再発リスクが高い発症後2週間以内に行うと効果が最大化出来ることが知られている(文献1,2).しかし,再発リスクが最大である48時間以内の治療効果が,発症後早期の高い周術期リスク(文献2,3)を上回るか否かについては検討されていない.ピッツバーグ大学のチームは比較的軽症(TIAやNIHSS平均3.3の軽症脳梗塞)でNASCET50%以上の内頸動脈狭窄症に対する48時間以内の血行再建治療(CEA or CAS)のリスクと有効性を評価した.

【結論】

患者は2016年7月から28ヵ月間に受診したCASもCEAも可能な178例で,各週交互にどちらかの治療オプションが呈示された.
120例が試験対象基準を満たし,発症後48時間以内に59例がCEAを,61例がCASを受けた.
発症後30日目の死亡と脳卒中の複合一次エンドポイントは,CEAで5.1%,CASで4.9%とともに低かった.死亡はCAS群で1例であった.なお,二次エンドポイントの一つである心筋梗塞はCEA群で2例(3.4%),CAS群で3例(4.9%)に認められた.血行再建部の再閉塞はCEA群で3例(5.1%)であった.

【評価】

日本では,症候性内頸動脈狭窄に対する治療として急性期にCEAやCASが実施されることは少なく,先ずDAPTとスタチン投与を行いプラークの安定化を図ってから,2週間~1ヵ月後に実施することが殆どである.ただし,この期間に新規梗塞が生じれば,やむを得ずCEA,CASが選択される.一方,最近では頭蓋内動脈閉塞に対する血管内治療(血栓回収)の際に,併せてCASを行うことは行われている.
ピッツバーグ大学のチームが行った急性期(<48時間)の血行再建治療(CEA or CAS)の30日の一次エンドポイントの約5%という値は,既報の血行再建治療待機患者の3日以内の脳梗塞再発リスク5.3%とほぼ同一であるが,14日までの11.5%よりは低い(文献4).すなわち,2週間待機するよりは,48時間以内に血行再建治療を行った方が,脳梗塞再発リスクは少ないことは言えるかも知れない.
ただし,本研究の対象は50%以上の狭窄となっているが,実際に血行再建治療が行われた症例の約9割は70%以上の狭窄例で,かつ非常に軽症例である.また対側閉塞,tandem leision,hostile surgical neck,access困難例など血行再建手術のリスクが高そうな症例も除かれており,対象はかなり限定されている印象がある.
さらに,血行再建治療のリスクと成功率は術者の技量に大きく依存していることは良く知られているところである.また,白人では頚動脈分岐部が日本人より1~2椎体低く,このためCEAが比較的容易で手術時間が短いことも良好な治療成績に影響を与えている可能性がある.
従って,この結果をもって早期血行再建手術の安全性・有効性が示されたと考えるのは早計すぎる.当然,多施設でより多数例を対象とした,48時間以降あるいは14日以降の血行再建治療群との前向きの比較試験が必要である.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岐浦禎展, 田中俊一

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