亜鉛投与による実験動脈瘤の成長抑制

公開日:

2020年11月22日  

最終更新日:

2020年11月23日

Association of zinc administration with growth suppression of intracranial aneurysms via induction of A20

Author:

Hayashi K  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:32217803]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

亜鉛には抗炎症作用があることが知られている(文献1).一方,動脈瘤の発生には慢性炎症の強い関与が示唆されている(文献2).京都大学のHayashiらはラット動脈瘤モデルを用いて,亜鉛投与の効果を検討した.生後7週の雄のSprague-Dawleyラットの左総頸動脈と左腎動脈を結紮後,高濃度食塩食で4週間給餌した後屠殺し,右前大脳動脈-嗅動脈分岐部を摘出して組織学的検討に供した.4週間給餌中の亜鉛投与群(3 mg/kg/日,腹腔内投与),ビークル(リン酸緩衝液腹腔内投与)群,前記外科処置を行わなかった対照群の3群(各9匹)の組織像を比較した.

【結論】

前記外科処置を行った全例に分岐部動脈瘤が発生していた.亜鉛投与は動脈瘤サイズの抑制(亜鉛群:37.1 ± 5.4 vs ビークル群:80.4 ± 7.8 μm, p<0.01)と内弾性板の温存をもたらした.また亜鉛投与は動脈瘤内へのマクロファージの浸潤を抑制しており,抗炎症シグナル蛋白A20(NF-κB抑制因子)の発現を増加させていた.

【評価】

先進国では食事の欧米化によって亜鉛の摂取量が減少している.特に高齢者では消化管からの吸収低下と尿中への排泄増加によって亜鉛欠乏に陥りやすい.亜鉛欠乏が,人における動脈瘤の成長と破裂にどれだけ寄与しているのか不明であるが,著者らはこの動物実験の結果から,未破裂動脈瘤を有する患者,とりわけ高齢者では適切な亜鉛サプリの摂取は増大-破裂を避けるために有効かも知れないと結論している.
おもしろい研究ではあるが,3 mg/kg/日は,体重60 kgだと180 mgに相当する.ところが人の亜鉛必須摂取量は10~15 mg/日であり,サプリ商品もそれに基づいて作られている.人の亜鉛サプリ1日量に相当する0.2 mg/kgくらいの投与量で同じ実験を行っても類似の効果が得られるのか興味深い.
当然ながら,未破裂動脈瘤を有する患者に対する亜鉛サプリ投与の前向き試験が行われれば言うことはない.
未破裂脳動脈瘤の発生,増大,破裂に炎症が絡んでいることはよく知られている.薬物治療としては,抗炎症作用のあるNSAIDs(文献3),スタチン(文献4)などが有望視されている.炎症の原因としては,歯周病(文献5),腸内細菌叢(文献6)などの報告もあり,こちらの面からの薬物や食餌療法なども期待される.日本人の未破裂脳動脈瘤がなぜ破裂しやすいのかを調査することが動脈瘤破裂危険因子の解明に直結すると予想され,遺伝子レベルでの国際共同研究も進みつつある.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

井川房夫

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