グリオーマ特異的遺伝子パネルを用いた遺伝子診断と膠芽腫の新規サブタイプの提唱

公開日:

2020年11月22日  

A tailored next-generation sequencing panel identified distinct subtypes of wildtype IDH and TERT promoter glioblastomas

Author:

Higa N  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University, Kagoshima, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:32748499]

ジャーナル名:Cancer Sci.
発行年月:2020 Aug
巻数:111(10)
開始ページ:3902

【背景】

2016年のWHO脳腫瘍分類改訂に伴い,グリオーマの診断にIDH1/2変異,1p/19q共欠失,H3-K27M変異などの遺伝子検査が必須となった.一方,1p/19q共欠失の判定に現在広く用いられるFISH法では偽陽性の問題がある.鹿児島大学のHigaらは,次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネルを独自に作成し,1p/19q共欠失判定およびその他遺伝子背景を網羅的に解析した.
対象は2018年以降に手術を行った106例のグリオーマである.そのうちIDH野生型膠芽腫の56例に焦点を当て,臨床学的及び遺伝学的背景の解析を行った.

【結論】

本パネルを用いて1p/19q共欠失は高精度で判別された(感度100%,特異度100%).
IDH野生型膠芽腫の58.9%がTERTp変異を有していた.PDGFRA変異/増幅はTERTp野生型に多かった(43% vs. 6%,p=0.001).クラスター解析では遺伝子背景から3群に分かれた.うち1群はPDGFRA変異,CDK4/PDGFRA増幅,CDKN2A/Bホモ接合性欠失,およびTERTp野生型で定義され,臨床的には高齢(p=0.021),Ki67高値(p=0.007),予後不良(p=0.012),傍脳室病変と関連した.

【評価】

本研究で用いられた遺伝子パネルの特徴は以下の通りである:①48個の遺伝子が対象,②1番および19番染色体上の計24遺伝子のコピー数を分子バーコード法で検出し,1p/19q共欠失を判定する.③単一プラットフォームを用い低コストで1p/19q共欠失および他のドライバー遺伝子変化を検出できる.
1p/19q共欠失の判定は,現在FISHを用いたものが商業ベースで普及しているが,部分欠失に伴う偽陽性の問題がある(文献1).筆者らの遺伝子パネルはFISHよりも高精度に1p/19q共欠失を検出し,さらにドライバー遺伝子を含む計48遺伝子を同時に解析することができる.本邦における,グリオーマに特化した遺伝子パネルの初の報告である.
本稿を含め,本邦におけるIDH野生型膠芽腫のTERTp変異は既報(70~80%)に比して低頻度であり,その頻度に人種差が関与する可能性を示唆した点は興味深い.
膠芽腫の既知のサブタイプのうち,IDH野生型のproneuralタイプは最も予後不良とされる一方,ベバシズマブの有効性が高いことが示唆されている(文献2).
本稿で筆者らが指摘したgroup Cに見られるPDGFRA変異はproneuralタイプのマーカーでもある.この群にも同様にベバシズマブが有効である可能性があり,今後の予後調査を含めた検討が期待される.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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