嗅窩髄膜腫に対する経鼻内視鏡 vs 開頭手術:1,063例のレビュー

公開日:

2020年12月1日  

最終更新日:

2020年11月30日

Endoscopic endonasal versus transcranial approach to resection of olfactory groove meningiomas: a systematic review

Author:

Purohit A  et al.

Affiliation:

Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31709465]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2020 Dec
巻数:43(6)
開始ページ:1465

【背景】

経鼻内視鏡手術(EEA)の対象はトルコ鞍周囲の腫瘍にまで拡がりつつあり,前頭蓋底腫瘍では嗅窩髄膜腫もその対象になりつつある.では,開頭手術と比較したメリットは何か.ジョンスホプキンス大学のMukherjeeらは,開頭手術とEEAを比較した5報1,063例(開頭手術922例,EEA141例)(文献1,2,3,4,5)を対象にシステマティックレビューを行った(メタアナリシスは出来ていない).

【結論】

全摘出率はEEAの方で低かった(70.9% vs 91.5%).術後髄液漏も術後嗅覚脱失もEEAの方で多かった(25.5% vs. 6.3%;95.9% vs 37.4%).

【評価】

この結果を見れば,前頭蓋底腫瘍のうちでも少なくとも嗅窩髄膜腫に関する限りはEEAに優位性はなく,安全性,有効性(全摘出率)の両面で開頭手術に優位性があるのは明らかである.
しかし,著者らは結論として,EEA術者の経験値の上昇に伴い,より繊細な手術が行われるようになり,術後合併症の抑制とEEAの頭蓋底腫瘍への応用が拡がるであろうと述べている.不思議な結論と言うしかない.

実際,このレビューの対象となった過去の論文で最大のものであるShettyらの報告(開頭手術444例;EEA101例)(文献2)でも,全摘出率はEEAで有意に低く(90.9% vs 70.2%,p<0.0001),嗅覚脱失も髄液漏もEEA群で多かった(61% vs 100%;25.7% vs 4.95%,p<0.0001).この結果を受けて,Shettyらは率直にタイトルも “Limitations of the endonasal endoscopic approach in treating olfactory groove meningiomas” とし,現段階では嗅窩髄膜腫に対するアプローチとしては開頭手術を選択する方が賢明であると示唆している.

良性腫瘍であるので,EEAで全摘率が少し悪くてもリカバリーの方法は有るだろうし,髄液漏もなんとか修復可能かも知れない.しかし,嗅覚脱失がほぼ必発の手術(EEA)を未だ嗅覚が保たれている患者に選択させるのにはどういう大義名分があるのだろうか.
本稿では触れられていないが,大型の髄膜腫における脳軟膜からの栄養血管の処理も,開頭手術がはるかに迅速で容易である.
唯一,開頭手術がEEAより不利な点は,脳へのダメージであるが,FLAIR高信号などの画像変化を除けば(文献3),その症状の多くは一過性で,実際にEEAと比較して高次脳機能が落ちていたという報告はない.

一方,視機能に関しては,その改善はEEAの方で高いという報告もある(80.7% vs 12.8%,p<0.0001)(文献2).ただし,この結果はEEA群と開頭手術群における腫瘍径の違いによって影響を受けているのかも知れない(平均3.55 cm vs 4.61 cm).
同じ前頭蓋底部髄膜腫のうち,より後方の鞍結節-鞍隔膜部髄膜腫に対しては視交叉・視神経を触らずに下面から見上げられる内視鏡手術の優位性が認識されつつある(文献6).しかし,嗅窩髄膜腫に関しては現在のみならず当分の間,決して同列には論じられないように思われる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

阿久津博義、藤尾信吾