CT(NWU)による脳梗塞発症時間の推定はMRI(DWI-FLAIRミスマッチ)を上回るか

公開日:

2020年12月1日  

最終更新日:

2020年12月1日

Lesion Age Imaging in Acute Stroke: Water Uptake in CT Versus DWI-FLAIR Mismatch

Author:

Broocks G  et al.

Affiliation:

Department of Diagnostic and Interventional Neuroradiology, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, Hamburg, Germany.

⇒ PubMedで読む[PMID:32939824]

ジャーナル名:Ann Neurol.
発行年月:2020 Dec
巻数:88(6)
開始ページ:1144

【背景】

発症時間不明の脳梗塞では,MRIのDWI-FLAIRミスマッチが発症時間推定の根拠として用いられている.一方で,急性期血管内治療の普及に伴い,DSAまでの時間短縮のためにCTを行う施設も増えている.ハンブルグ大学のチームはCTによる脳の定量的純水分取り込み量(NWU)測定によって発症後経過時間が推定出来る事を報告してきた(文献1).本研究は発症時間が明らかな脳梗塞50名(30名が4.5時間以内)を対象に,発症後4.5時間以内であることの診断におけるCT-NWUとDWI-FLAIRミスマッチの精度を比較した.NWUは,正常側と比較した脳虚血領域ROIにおけるCT吸収値の低下量%と定義した.

【結論】

虚血巣ROIはCT灌流画像におけるCBV低下領域とした.CTの後にMRIが施行され,その時間差は中央値35分であった.11.5%をNWU閾値として設定した.
CT-NWUは精度86%,感度91%,特異度78%で,DWI-FLAIRミスマッチは精度69%,感度58%,特異度83%であった.AUCはCT-NWUでは0.91とDWI,FLAIRを含むマルチパラメーターMRIの0.86より高かったが,有意差はなかった(Delong検定:p=0.14~0.1).
87例の発症時間不明(起床時卒中)の脳梗塞患者で検討したところ53%のNWUが閾値(11.5%)以下で4.5時間以内の発症と推定出来た.

【評価】

本研究は,早期脳梗塞(<4.5時間)診断におけるCT-NWUとマルチパラメーターMRIの精度を同一患者で比較した初めての研究である.
著者らは,脳梗塞巣における正常側と比較した非造影CT上での吸収値の低下分を純水分取り込み量(NWU)として,これが11.5%以下であれば,発症から4.5時間以内と判定した.脳梗塞巣の範囲は,造影灌流CTにおけるCBV低下の領域とした.その結果,CT-NWUは既知の発症後4.5時間以内の脳梗塞を精度86%,感度91%,特異度78%で診断し得,DWI-FLAIRミスマッチと同程度であった.ROC解析では,その精度はマルチパラメーターMRIより高い傾向であった.
興味深いのは,本試験では発症時間不明(起床時卒中)の87例の脳梗塞患者のうち53%で,NWUが閾値(11.5%)以下で4.5時間以内の発症と推定出来たとのことであるが,2018年のWAKE-UP研究でも,起床時卒中958例のうち,DWI-FLAIRミスマッチがあり4.5時間以内の発症と推定出来たのは53%(503例)で(文献2),本研究結果と完全に一致している.
本稿では造影CTとその解析ならびにMRI撮像にかかる時間は示されていないが,臨床現場の関心は,発症時間不明の脳梗塞患者が受診したときに,CTあるいはMRIのどちらを行うべきか,すなわちどちらが早く発症後4.5時間以内の脳梗塞患者を発見して,tPA投与を開始できるかという点にある.今後,その観点から前向き試験が行われるべきである.
ただし,MRIもDWIとFLAIRだけなら4分,頭部MRAを加えても10分で終わるので,ヨード造影剤投与のリスクや解析にかかる時間を考慮すれば,CTを選択するメリットは少ないかも知れない.
むしろ,現段階ではCT-NWUはペースメーカー装着患者におけるMRIの代替としての意義が大きいように思われる.
ただし将来,AIが微細な脳組織のCT吸収値の左右差を判定できるようになれば,造影灌流CTを用いた虚血領域の範囲設定は不要になり,単純CTだけでNWUの測定が可能になるかも知れない.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

神田直昭