出血性ショックのリスクがある外傷性脳損傷患者に対する病院前血漿輸液は生命予後を改善する:PAMPer試験二次解析

公開日:

2020年12月14日  

Association of Prehospital Plasma With Survival in Patients With Traumatic Brain Injury: A Secondary Analysis of the PAMPer Cluster Randomized Clinical Trial

Author:

Gruen DS  et al.

Affiliation:

Department of Surgery and Critical Care Medicine, University of Pittsburgh, Pittsburgh, PA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33057642]

ジャーナル名:JAMA Netw Open.
発行年月:2020 Oct
巻数:3(10)
開始ページ:e2016869

【背景】

このPAMPer試験は,出血性ショックのリスクを有し,ヘリ搬送中の外傷患者に対する病院前血漿2単位(AB型)輸液に関するクラスター(施設毎に1ヵ月入れ替え)RCTである.既に全対象(501例)に対する解析の結果,同治療が標準治療(晶質液の輸液など)に比較して30日死亡率を有意に低下させる(23.2 vs 33.0%,p=.03)ことを報告している(文献1).本稿は,対象例のうち外傷性脳損傷(TBI)を有する患者(166例)をCT所見を基に抽出して,二次解析したものである.血漿群74例,標準治療群92例.

【結論】

多様な交絡因子や臨床変数調整後,TBI重症度解析後の30日間生存は,病院前血漿投与群が標準治療群より有意に改善していた(51 vs 26%,HR;0.55,p=.03).病院前GCS<8と多発外傷(AIS≧3)の患者では,病院前血漿投与群の生存が標準治療群より有意に改善していた(HR;0.56[95% CI,0.35~0.91]と0.50[0.28~0.89]).また,外傷現場から直接ヘリ搬送された患者では病院前血漿投与群の生存が有意に改善していたが(HR;0.45,p=.005),病院間ヘリ搬送患者では差がなかった(HR;1.00,p=.99).

【評価】

本PAMPer試験データの二次解析は,外傷性脳損傷(TBI)患者で出血性ショックのリスクがある患者(166例)に対する病院前血漿輸液は生命予後を大きく改善することを明瞭に示している.逆にTBIのない患者335例では,病院前血漿輸液は生命予後の改善効果を示さなかった(HR;0.80[0.49~1.30]).
さらに,外傷現場から直接ヘリ搬送された患者では病院前血漿輸液が有用であったが,病院間ヘリ搬送患者では有用性は示されていない.論文中では,受傷から血漿輸液終了までの時間は具体的に示されていないが,両者の差がこの時間差にあることは想像に難くない.
なお本試験で採用された外傷患者における出血性ショックのリスクとは,SBP<70 mmHg以下,あるいはSBP<90 mmHg以下でHR>108/minと定義されている.
重症外傷患者における血漿輸液の意義としては血液量増加,炎症反応の変化,内皮障害の低減,凝固異常の予防と改善などが報告されている.また血漿輸液そのものが頭部外傷における神経機能を改善させる可能性も示唆されている(文献2,3).今後の研究で,そのメカニズムが明かされるのを期待したい.
また,今回は評価対象アウトカムは受傷後30日間の死亡であったが,長期の機能予後はどうなのか.また,搬送時間は40分であるが,その時間内での血漿輸液の開始・終了のタイミングと生命予後の関係はどうかも興味深い.

ちなみにpamperは甘やかす,気ままにさせるなどの他動詞.紙おむつブランドのパンパースはこれに由来している.各リサーチグループはトライアルの名前付けに苦労しているのだろうが,このトライアルにPamperはしっくりこない.これにくらべれば急性期脳梗塞に対するDAWN,EXTEND,THAWSなどは秀逸.MR CLEANも良いが,male chauvinisticな香りがする.なかなか難しい.

執筆者: 

有田和徳