プロトコールを遵守すれば,MRI非対応心臓デバイス装着患者でも頭部MRI検査は安全

公開日:

2020年12月14日  

最終更新日:

2020年12月15日

Feasibility, safety, and utility of brain MRI for patients with non-MRI-conditioned CIED

Author:

Mayeku J  et al.

Affiliation:

Neurosurgical Service, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31624965]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2020 Dec
巻数:43(6)
開始ページ:1539

【背景】

心臓植込み型電気的デバイス(CIEDs:ペースメーカー,除細動器)が植込まれた患者では,MRI検査によってリードの発熱,意図しない心刺激,マグネットによるリセットなどの合併症が起こり得る可能性がある.このため近年,MRI検査が可能なCIEDsが開発され,いまやMRI対応型デバイスの装着の方が主流になっているが,未だにMRI非対応のCIEDsが装着されている患者は米国で200万人いる.ベス・イスラエル病院のMayekuらは,同病院のプロトコール(文献1,2)に従って1.5T機種で頭部のオフラベルMRIが施行されたMRI非対応CIEDs装着患者126例(前向き登録データベース)を解析して,安全性を評価した.

【結論】

MRI撮影前に,除細動器植込み患者における頻拍性不整脈治療機能は解除した.ペーシング依存患者では非同期モードへ,他の患者ではデマンドモードに切り替えた.MRI中はワイヤレス心電計でモニターした.MRI前後にデバイスの動作確認を行った.
MRI撮影適応は脳外科45.2%,神経内科51.6%,その他3.2%で,対象疾患は腫瘍68.3%,血管障害12.7%,脳深部刺激3.2%,その他15.9%であった.MRI撮像後に追跡可能であった96.9%の患者では,臨床的なあるいは機器上の問題は起こらなかった.得られたMRIに基づいて,49.6%の患者で臨床上意義のある決定や介入がなされた.

【評価】

MRI非対応のCIEDs装着患者の50–75%は,生涯のうち1回は身体のどこかのMRIが必要になり,そのうち40–50%が脳のMRI検査である(文献3).したがって,MRI非対応のCIEDs装着患者に対するMRI検査を安全に実施することは国民的医療上の重要な課題である.
本研究対象の48%の患者では,診断確定に関して,MRIオフラベル使用が他の画像診断では得られない重大な情報をもたらした.また,残りの患者でも,MRIによってもたらされた情報で恩恵が得られたと記載されている.著者等は,これらの結果を受けて,厳密なプロトコールに基づいた,MRI非対応CIEDs装着患者に対するMRIのオフラベル使用は安全で意義があると結論している.

既にRussoやNazarianらは,上記のプロトコールに従って実施すれば,MRI非対応CIEDs装着患者でも,1.5T MRI検査が安全に実施可能であることを報告している(文献4,5).NazarianらのMRI非対応CIEDs装着患者1,509例に対する2,103回の1.5T MRI検査の結果,全例で長期の臨床的有害事象は認められなかった.MRI直後で最も頻度の高い異常はP波振幅の低下で,1%に発生した.長期的にはP波振幅の低下,心房補足閾値の上昇,右室補足閾値の上昇,左室補足閾値の上昇がそれぞれ3-4%に認められたが,これらの変化には臨床的意義はなく,機器の交換やリプログラミングを要しなかった.1例のみで,MRI検査後にプログラミング障害が起こりデバイスの取り替えが必要となったと記載されている(文献5).
本研究で使用されたNazarianらのプロトコール(2006年,文献4)は,現在最も広く認知されているものであるが,今後,より大規模な前向き試験でその安全性が検証されなければならない.

現在,本邦では日本医学放射線学会などが定めたMRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査実施条件がある(文献6).これによれば,所定の研修を終えた循環器医師が,放射線科医師,診療放射線技師,あるいは臨床工学技士の協力の下に定められたマニュアルに従って,検査前の刺激閾値など各種計測値の確認,CIEDsの設定と,MRI検査後のCIEDsのリプログラミングなどを行うことが要求されている.また,MRI検査中はパルスオキシメーターあるいは心電図モニターを用いて心拍を連続的に監視する.また,近接した部屋に電気的除細動器を備え,必要な時に直ちに使用できるようにしておくことも求められている.
本論文のベス・イスラエル病院のプロトコールでは,MRI非対応のCIEDs装着患者のMRI検査では,神経放射線科所属医(Neuroradiology attending staff)のレビューとMRI検査の妥当性の承認,循環器内科医(cardiac electrophysiology staff)のMRI検査前,検査後の介入が必須となっている.
したがって,MRI対応CIEDs装着患者であっても,非対応CIEDs装着患者であっても,日本のマンパワー不足を考慮すると,CIEDs装着患者に対するMRI検査が普及するには時間がかかるかも知れない.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

寺田一志