難治性側頭葉てんかんの手術治療におけるステレオ脳波記録の意義

公開日:

2020年12月14日  

最終更新日:

2020年12月15日

Decision-making in temporal lobe epilepsy surgery based on invasive stereo-electroencephalography (sEEG)

Author:

Dührsen L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, Hamburg, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:31502028]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2020 Oct
巻数:43(5)
開始ページ:1403

【背景】

海馬側頭葉切除術は難治性側頭葉てんかんにおける重要な治療手段であるが,MRIでの病変がない場合,側方性やてんかん原性領域の決定は決して容易ではない.ハンブルグ大学のDührsenらは側頭葉切除の候補となった152例の側頭葉てんかん患者を対象に,ステレオ脳波測定(sEEG)の意義を検討した.21例が術前検査結果の評価における不一致のためにsEEG電極が挿入された(6例は両側).21例中11例にMRI上の異常が認められた.

【結論】

sEEGの結果を受けて,8例は最初の計画通りの手術と決定した(グループ1,うち7例で実際に手術).6例は推定てんかん原性領域の変更が行われ,予定したものとは異なった裁断的手術が行われた(グループ2).4例は術後てんかん発作低減効果が少ないことが予測されたが,最終的に側頭葉切除が実施された(グループ3).3例では,てんかん原性が明確でないか両側性のために当初予定していた側頭葉切除は中止された(グループ4).各群の手術後ILAEクラスI(前兆も含めた完全な発作消失)の頻度はグループ1;75%,グループ2;33.3%,グループ3;25%であった.なお非sEEG症例全体では71.1%であった.

【評価】

難治性側頭葉てんかんにおける側頭葉切除では,非侵襲的診断プロセスを通して,最終的な手術側,手術法の決定にいたることが多いが,時に硬膜下電極やsEEGなど侵襲的な検査が要求されることもある(文献1,2).著者等の難治性側頭葉てんかんにおける治療法の決定(実施,側性,スタンダード手術,裁断的手術,非実施)は,先ず第一段階で,症候,video-EEG,神経心理,MRIの一致があれば手術,そうでなければ第二段階で,機能代謝画像(PET/SPECT)が一致すれば手術,そうでなければ第三段階のsEEGに進むというプロセスになっている.
実際には側頭葉切除の候補となった側頭葉てんかん患者の13.8%(21/158)がsEEGに進んでいる.また,sEEGに進んだ症例の17例(81%)が手術を受けているが,13例(61.9%)では当初予定したものとは異なる治療選択がなされている.
すなわちsEEG検査は手術予定の側頭葉てんかん患者の術前検査結果に不一致がみられる場合の意思決定に強い影響を与えることがわかる.

著者らによれば,側頭葉てんかんに対する硬膜下電極は合併症を生じやすい上に内側側頭葉構造からの脳波活動を記録しにくい(文献3).一方,側頭葉は深く入り組んだ脳溝の故に,sEEGの方が向いているという.sEEGで,最も重篤な合併症は脳内出血であるが,既報のシステマティックレビューでは約1%に認められ(文献4),本研究の21例では1例にsEEG抜去後に脳内出血が認められたという.
最近,内側側頭葉てんかんと判断して前部側頭葉切除を行ったが,発作消失にいたらなかった症例の中には,島(insular)起源の発作を伴っている症例があることが指摘されている.側頭葉てんかんにおけるsEEGの利用が,このような症例の術前ピックアップを容易にし,insularを含んだ手術戦略の立案や,逆に不要な手術の回避につながることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

飯田幸治