パーキンソン病に対する視床下核と対側淡蒼球内節に対する脳深部刺激(DBS)

公開日:

2020年12月15日  

最終更新日:

2020年12月15日

Combined Unilateral Subthalamic Nucleus and Contralateral Globus Pallidus Interna Deep Brain Stimulation for Treatment of Parkinson Disease: A Pilot Study of Symptom-Tailored Stimulation

Author:

Zhang C  et al.

Affiliation:

Department of Functional Neurosurgery, Ruijin Hospital, Shanghai Jiao Tong University School of Medicine, Shanghai, China

⇒ PubMedで読む[PMID:32459849]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2020 May
巻数:87(6)
開始ページ:1139

【背景】

視床下核(STN)と淡蒼球内節(GPi)はパーキンソン病に対するDBSの最も有効なターゲットであるが,それぞれに特有の効果とリスクがあり(文献1,2,3),どちらを選ぶか悩む事も多い.上海交通大学のZhangらは,効果を最大化し,副作用を最小化するために,非対称性のパーキンソニズムや重症の主要運動症状を示す8例のパーキンソン病患者に対するDBSにおいて,一側STNと反対側GPiに刺激電極を設置した.電気刺激開始後6ヵ月と12ヵ月目の臨床症状を評価した.

【結論】

UPDRS-IIIとアップ&ゴー時間の両者で,6ヶ月と12ヵ月目のオフメディケーション/刺激オンの条件で,患者らは運動症状の有意の改善を示した.12ヵ月目において,患者のQOLは向上し,レボドーパの内服量は減少した.12ヵ月目において,オンメディケーションでの両側刺激は歩行と転倒の評価で体軸症状の64%の改善をもたらした.1例で術後の錯乱・幻覚が,2例で6ヵ月間の刺激で構音障害が認められたが,不可逆的な有害事象は認められなかった.

【評価】

パーキンソン病におけるDBSの効果のメカニズムに関して,振戦の抑制は原因となるoscillationの抑制であることはほぼ確実とされるが,寡動,筋固縮,歩行障害を改善する機序については十分に判っていない.
DBSも振戦を主症状とするものでは視床腹側中間核(Vim)がターゲットとされるが,筋固縮,寡動,ジスキネジア,日内変動に対してはSTNとGPiで効果に大きな差がないとの報告が多い.
一方,STN-DBSではオフ症状改善,薬物減量が可能であり,それに伴い薬剤誘発性ジスキネジアの改善が得られる.一方,GPi-DBSでは薬物減量はできないが,薬剤誘発性ジスキネジアに対しては直接的な抑制効果がみられやすい.また認知症状,気分障害がSTN-DBSで進行するとの報告もあり,認知機能低下を示す患者ではGPiを選択する施設もある.

今回のSTNとGPi同時刺激はオフ症状改善と薬物減量効果,ジスキネジア直接抑制,うつや認知機能低下の回避を同時に狙ったものということになろうか.本研究は,対照の無い少数のケースシリーズであるので,評価の術はない.ただ,安全上の問題がなさそうなことはわかった.
今後著者らが適切な対照を設けた前向き試験で本手技の有効性を提示することを期待したい.

【コメント】
一般的に両側STN刺激はオフ症状を改善し,内服薬を減量することで薬剤誘発性ジスキネジアを改善する.一方GPi刺激,破壊術はジスキネジア,ジストニアなどの不随意運動症状に対する直接効果がある.一方で,両側STN刺激は認知症状を悪化させるとの報告もあり,認知機能障害が疑われジスキネジアが強い場合はGPi刺激を選択する場合がある.本研究の著者らの方法は,両方のターゲットの利点を狙い,欠点を減少させようとする試みのように思う.
また,この報告を読むと一側のSTN刺激でも運動症状が改善し内服薬の減量が可能であることが示唆される.今後は,まず一側のSTN刺激を行い,認知症状の経過,体軸症状を見ながら,次のステップで反対側のSTNかGPiの刺激という選択肢も出てくるかも知れない.
たかの橋中央病院 ニューロモデュレーションセンター 秋光 知英

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

秋光知英