若年腰椎椎間板ヘルニア患者における肥満と喫煙の影響

公開日:

2020年12月15日  

The impact of obesity and smoking on young individuals suffering from lumbar disc herniation: a retrospective analysis of 97 cases

Author:

Lener S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Medical University of Innsbruck, Innsbruck, Austria

⇒ PubMedで読む[PMID:31414196]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2020 Oct
巻数:43(5)
開始ページ:1297

【背景】

肥満や喫煙が腰椎ヘルニアをはじめとする筋骨格系疾患に及ぼす悪影響は良く知られているところである(文献1,2)が,若年者の腰椎椎間板ヘルニアの発生や手術治療からの回復に与える影響に関しては十分には判っていない.インスブルック大学のLenerらは,顕微鏡下脱出髄核摘出術(sequestrectomy)を受けた17~25歳の93人を非肥満群75人と肥満群(BMI>30)18人に分け,さらに肥満群をヘビースモーカー(≧20本/日),スモーカー(<20本/日),非喫煙の3群(各6例)に分けて解析した.

【結論】

同年代の一般人口に比較して対象患者93人に占める肥満の割合は高かった(19.4% vs. 3.8~7.1%,RR 3.17;p<0.01).また,習慣的喫煙者の割合も高かった(62.4% vs. 30.2%,RR 2.0;p=0.01).非肥満群では肥満群よりも術後運動症状と疼痛の改善が良い傾向であった(p=.067と.074).肥満+喫煙は手術後3日目と退院時の運動症状に有意の負の影響を与え(p=0.015と0.025),手術後6週目の疼痛評価と鎮痛剤使用量にも有意の負の影響を与えていた(p=0.037と0.034).

【評価】

肥満と腰椎ヘルニアとの関係は従来から指摘されているが,本研究では若年腰椎椎間板ヘルニア患者でも有意に肥満患者が多いことが明らかになった.ただし,肥満が腰椎ヘルニアの原因であるのか,腰椎ヘルニアによる痛みが肥満の誘因なのかは未だに不明である(文献1,2,3).また従来,喫煙と腰椎ヘルニアの関係も報告されているが(文献2,4),本研究では若年腰椎ヘルニア患者においても有意に喫煙率が高いことを確認できた.
さらに,喫煙者,肥満者では術後運動症状と疼痛の改善が悪いことが若年腰椎椎間板ヘルニア患者においても示された.また肥満患者の中でも,ヘビースモーカーでは,スモーカーや非喫煙者に比較して,診断時,手術後3日目,退院時のいずれにおいても運動機能障害が強いことが明らかになっている.
より多数例で検証されるべき結果である.
また,腰椎椎間板ヘルニアの発生,悪化,術後症状改善の遅延に与える肥満や喫煙の影響に関しては,サイトカインなどの炎症性シグナルの影響が示唆されているが(文献5,6),今後さらに検討が必要である.

【コメント】肥満が腰椎ヘルニアの原因か,ヘルニアによる痛みが肥満の誘因か,それは多分に症例によると思われ,「鶏が先か,卵が先か」,という議論になってしまう.ヘルニアで来院した患者の発症前の体格を調べている訳ではないので何の根拠もないことではあるが,脊椎臨床に携わった経験からは圧倒的に肥満がヘルニアに先行した症例が多いのではなかろうか.とくに若年の腰椎ヘルニアは脱出髄核により急性発症することを考えると,ヘルニアによる疼痛が肥満の悪化因子になることはあっても,ヘルニアが肥満に大きく先行するケースは少ないと思われる.医学統計すると,「どちらが先か根拠はでない」,という書き方にはなるが,臨床家の印象はおそらく私と同じではなかろうか.
University of Iowa 脳神経外科 山口智

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

山口智、米永理法